内容説明
女中バベットは富くじで当てた1万フランをはたいて、祝宴に海亀のスープやブリニのデミドフ風など本格的なフランス料理を準備する。その料理はまさに芸術だった…。寓話的な語り口で、“美”こそ最高とする芸術観・人生観を表現し、不思議な雰囲気の「バベットの晩餐会」(1987年度アカデミー賞外国語映画賞受賞の原作)。中年の画家が美しい娘を指一本ふれないで誘惑する、遺作の「エーレンガート」を併録。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
240
【映画鑑賞済】大好きだったこの映画に原作があることを知り、読みたい!って祈ってたら、地球の裏側に住む季節外れのサンタさんが届けてくれました。映画に負けず劣らずの静謐さ・力強さに圧倒されて読了。同じく映画鑑賞済みの『アフリカの日々』の原作者(女性!)でもあったことを知り、驚いています。作中のカソリックとルター派の確執とか、やはりもう少しヨーロッパにおけるキリスト教史も知りたいな、と思いつつ。うん、私もバベットのように強く生きねば。2016/07/20
ケイ
136
バベットの動機はよくわかる、真の芸術家であれば、相手の理解には関係なく表現の欲求を満たしたくなるだろう。この1万フランは今で言えば310万ほどになると読書会で教えてもらった。その金額だからということも一因としてあっただろう。そして、老嬢二人への気持ちも無縁ではあるまい。読後に映画も見たが、そちらはバベットの政治的姿勢についてほとんど触れられていないのが気になった。彼女が敵としたもの、彼女の料理を正しく評価した人たちは、彼女が立ち向かった人々であり、もうすでにこの世にいないことはとても重要だと思う。2016/07/20
buchipanda3
119
著者初読み。表題作は先日読んだコニェッティの「狼の幸せ」の作中に登場した作品で、バベットという人物に興味が湧いてこちらを手に取った。本作には「エーレンガート」も収録され、どちらも題名となっている女性の終盤の決めセリフにガツンとやられた。見事と思えた。信念の女性であり、強さを感じるが、でも安易に強いと言うのが憚れるほど潔い純真さを醸し出していた。二篇は互いに読み味が違うが、いずれも敬虔な世界を大切にしており、その中で自分の存在を改めて見直す人たちの姿が印象深い。読後も余韻としてその物語の世界観が心に残った。2023/05/22
rico
106
女中バベットがくじで手にした大金で用意した晩餐会は、彼女が仕える姉妹を含めて禁欲的に生きてきた人々に、あらゆる軛からの解放と幸せな時間をもたらします。それは「場」と「時間」も含め、「芸術家」バベットの最高傑作なのかもしれません。欲を言えば、料理の描写がもっと欲しい。だってとても美味しそうなんだもの。このシーン、アカデミー賞受賞の映画では、どのように描かれているのでしょう!「エーレンガート」は、前半物語世界に入っていけなかったのですが、後半のスピード感・展開に痺れます。触れる機会の少ない北欧文学。深いです。2020/10/12
nobi
103
ワーグナーの楽劇に相応しい大劇場でなくて小劇場、で昼夜二公演の近世シリーズ観るような心温まり感ワクワク感。少し抹香臭い、ってこれはキリスト教には使わないか、のもまた物語の世界に誘い込む要素。美味しい料理は人々を幸福に饒舌にする。それもパリの宮廷で振舞われた消尽と紙一重のであれば尚更。この世の快楽を悪と見なす軛もその晩は外される。が昼公演の大柄でがっしりとしたバベット。夜公演はエーレンガートが荒れ馬を御しながら、でもエレガントに登場。性格も容姿も違うのに二人の心意気が光輝を放つ。さ今晩は海亀のスープにしよ。2017/10/21
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