内容説明
結婚して間もない津田・お延夫妻の不安定な家庭生活を中心に、清子、小林などの登場人物を巧みに配して展開される醜悪な人間の百鬼夜行…。漱石の生涯のテーマであるエゴイズムとその克服の問題が、精緻な心理解剖とともに追及される本書は、大正5年5月26日から同年12月14日まで新聞連載され、漱石の死によって中絶された遺作である。日本近代文学の傑作を全一冊でおくる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
65
漱石未完の作品『明暗』です。対決の物語と言ってもいいでしょう。色々な登場人物が戦っているのが面白く、引き込まれました。いよいよこれから本筋が始まるのだろうというところで終わってしまっているのが残念なところです。完成していたらどのような作品になるのか想像もつきません。2020/05/26
tokko
18
な、長い…。これくらいのボリュームがあると大作を読んだなぁという実感がわきます。残念なのは未完であるところだけれど、この清子の部屋でプツンと終わっているのも面白いかもしれない。何も津田夫妻の結末が描かれていなくても、十分テーマは伝わるように思います。しかし段々漱石の描く女性が怖くなっているように思うんだけれど、先生の周囲には怖い女性が多かったのかしら(笑)2017/07/05
あくび虫
7
未完の遺作…長いです。まだ風呂敷を広げる趣です。新しい試みの矢先かとも思え、随分と惜しいです。――物語の存在が強め。ある時点から、漱石の作品は、何も起こらずひたすらディティールを書き込む印象ですが、「明暗」ではどっちもやろうとしたのかなと。――「精緻な心理解剖」評に苦笑。正直、偏執的に内へ内へえぐり込んで、崩れこんできて、人間の型をとどめていないような…戯画化されたキャラクターは、猫とか、坊ちゃんでこそ生きましたけれど、淡々とした世界観の中だと率直に変。長生きして夫婦物から解脱した作品が読んでみたかった。2022/10/23
hitsuji023
4
未完の本ということを知りながら読んでいたが、半分くらい読んで読むのを止めた。未完の本、未読。 小説としては、所々の会話が面白いのだが、同じような展開が続くことと地の文の回りくどい説明がしつこく感じる。登場人物の関係性を知った上で、場面場面で抜粋して読むのがいいのかもしれない。2017/06/04
訪問者
2
「明暗」は未完ということもあって評価が難しいが、此処まで漱石作品を読んできて思うのは、やはりこれだけ水準の高い作品を発表し続けた漱石は素晴らしい大作家である。夏目漱石と谷崎潤一郎こそが日本文学の最高峰だろう。勿論、私がこれまでに読んだ作家の中ではという但し書きがつくが。2015/07/17