内容説明
月夜の緑の草原や、青い海原の底で、バラエティーに富んだ妖精たちと人間が織りなす詩情ゆたかな物語のかずかず。アイルランドで何世紀にもわたって語りつがれ、今なお人びとの心に息づいている祖先ケルト民族のさまざまな民間伝承や昔話のなかから、妖精譚のみを収めた古典的名著。付録にイエイツの「アイルランドの妖精の分類」を収録。
目次
群れをなす妖精(フエアリー)たち
取り替え子(チェンジリング)
ひとり暮らしの妖精たち
地と水の妖精たち
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あたびー
24
#日本怪奇幻想読者クラブ アイルランドの文豪イエイツが複数の民話採集本から選んで編集したもの。民話なのに「むかしむかし」で始まらない、つまり現実にあったこととして語られる妖精たちとの遭遇。キリスト教の伝播により片隅に追いやられてしまったとは言え明らかについこの間までは存在していた妖精たちの姿。それは明治まで狐狸や妖怪を現実のものとしていた日本と相通じるところがあるから私たちには容易に理解できる心理だ。アメリカ人にはわかるまい。いつまでも失ってほしくないその心は、しかし徐々に消え去ろうとしている。2020/02/06
シュエパイ
15
夜中に死体を担がされ、一晩中墓所を探してめぐった男の話が、なんて幻想的で妖しく美しいんでしょう!まるで八百万の神々のように、守り施し且つ祟り害する存在に、大使、人が出来るのはただ、怒らせないように祈ることだけなのですね。基督教にころされた他教の神々が、小さな妖精たちに姿をかえ、民間信仰として融合し残り続けている様子は、哀しみもありつつ、驚きをはらんでおり、非常に惹き付けられました。日本の天女伝説や、こぶとりじいさん等の伝承との類似は、なんによるものなんだろう・・・。想像するだけで、さらにドキドキしてきます2012/12/25
彬
9
今よりずっと妖精が身近だった頃の話を書き留めてくれたイエイツに感謝。農民の素朴な想像力と大地の自然が生き生きとしていたころの話は読んでいて面白かったです。ところどころに何げなくある会話や動作が日本には馴染みなく戸惑うところも異文化の一つとしてよかったですね。読んでいて印象的だったのは、妖精の話とキリスト教概念がごちゃごちゃになっている話は文化の衝突の印象があるなあということ。個人的にはキリスト教概念がないほうが、やっぱりすっきりしているので好きですね2011/08/22
あかつや
8
イェイツが収集したアイルランド各地の民話の内、妖精に関するものを集めたもの。妖精といってもすぐ頭に浮かんでくる可愛らしいあれだけじゃなくて、日本で言うところの妖怪みたいなものも含まれる。日本の妖怪は水木しげる大先生が可視化したけど、こちらの妖精はメガテンで仲魔にした奴らもいて、金子一馬の絵でイメージしちゃうな。リャナン・シーとかバンシーとか。お話も日本の昔話とも共通するようなのも多くて、こういうのは世界共通だなあと思った。妖精は基本的に領分を侵さなければいろいろいい事してくれる。妖精さんに会いたいなあ。2020/05/13
ひのえ
8
アイルランドに伝わるメロウ、レプラホーン、プーカなどいろんな妖精の話。各妖精の詳しい解説も載っていてよかった。妖精といっても姿形から性質まで様々。(全部が全部そうではないが)彼らは日本的な美しく愛らしい存在ではなく、むしろ自我と欲望の塊のような存在だった。しかし一切の行動に悪意はないのだからある意味で一番質の悪い存在かも知れない。一番好きなのは、取り替え子の『ジェミー・フリールと若い娘――ドニゴールの物語』。2015/05/18
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