著者等紹介
エウリピデス[エウリピデス]
480B.C.~406B.C.アイスキュロス、ソポクレスとならんだギリシア三大悲劇詩人の一人。アテナイの名門に生まれ、25歳~30歳で劇壇にデビュー。その活動は半世紀に及び、ソポクレスとともにアテナイ劇壇の重鎮であった。生涯の作品数は75篇とも80篇ともいわれる。晩年、マケドニアの王アルケラオスに招かれ、その地で客死した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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syaori
65
エウリピデスの作品は、アイスキュロスやソフォクレスとは物語の中心にあるものが異なっているように感じます。前二者が運命という「神の道」に対する人間の選択と生き方を中心に置いていたとするならば、作者の悲劇の中心にあるのは、パイドラの義理の息子への道ならぬ恋や、妻を身代わりに死なせて嘆くアドメトスの欺瞞というように人間の情念や情動が織り成す悲喜劇で、そのための緻密で周到な構成と冷徹で豊かな人物描写に目を奪われます。トロイア王妃ヘカベの前で敗戦後の女性たちの悲劇が展開される『トロイアの女』に胸打たれながら次巻へ。2021/09/08
こうすけ
27
『トロイアの女たち』『メデイア』を読みたくて挑戦、とても面白かった。『アルケスティス』『ヒッポリュトス』も良い。ペロポネソス戦争中という執筆時の背景から、アテネを称賛しスパルタを貶すというプロパガンダ要素もある。登場人物が口論し合う所はシェイクスピアのようで面白く、また物理的な縛りもあると思うが、アクションの見せ場を省略するところがドラマとして有効。それにしても、運命を前に人間はいかに無力か、ギリシアの人々は身に染みて感じていたのだろう。2021/01/14
松本直哉
18
ラシーヌの「フェードル」でいつもひっかかるのがイポリット(ヒッポリュトス)のキャラ設定の曖昧なことで、恋に靡かず女を寄せ付けないといいながらアリシーを恋する一貫性のなさ。しかし元ネタのエウリピデス「ヒッポリュトス」を読むとそもそもアリシーが登場せず、武を好み恋には無関心な青年として雄々しく描かれる。同性愛が禁忌だった17世紀フランスではこういう人物設定は危険だったのかもしれないが、逆に異性愛至上主義にとらわれない古代ギリシャのほうが新鮮に感じられた。大詰めで登場する女神アルテミスもなかなかかっこいい。2017/01/26
em
16
あの前あの後あの人は…のトロイア戦争前・後日譚。読中肩に重くのしかかるものはアイスキュロスより軽め?と思ったのは最初だけ。700頁超の終盤「トロイアの女」にてようやく、トロイアの王女カサンドラの狂乱に遭遇。彼女はアポロンの巫女(つまり乙女)なのにトロイア陥落後、敵将の妾となってしまう。狂気に憑かれて天幕を飛び出して舞い踊り、自らの運命とオデュッセウスの漂流を予言するカサンドラは圧巻。他にも、狂気の女神リュッサの仕業で妻と子を殺したヘラクレス、テセウスとの友情など、見逃せない話の数々を堪能しました。2017/12/25
tieckP(ティークP)
9
700ページ以上あるので、さすがにタフな読書だった。若い巻から読んできたので、しぜんとそれらを補完するような読書経験になって、作家同士を比較するよりもまず、ギリシア悲劇全体を楽しむような形で読み進めた。ギリシア悲劇内の作家の差よりも、ギリシア悲劇自体の特徴に目がいくというのもある。ただ、デウス・エクス・マキーナについてはほかの作家より確かに目立っていて、けれどソポクレスの「ピロクテテス」でヘラクレスが出てきたようなご都合主義は感じなかった。使えるツールは使って、表現の幅を広げようとしたんじゃないかな。2013/04/29
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