出版社内容情報
人類の発展で地球規模の環境変化が起きた時代・人新世。優れた観察者で記録者だった画家たちはその変化をどう描いたか。新たな西洋美術の見取り図を提案する。
内容説明
人新世(アントロポセン)。人類が地球の地質や生態系に与えた影響に注目し、近年提唱されている地質区分である。人新世は、気候変動や環境破壊をもたらし地球を危機に陥れた。では芸術はこれとどうかかわってきただろう。美術作品は環境変化にきわめて敏感であり、芸術とサイエンスをつなぐものとしてエコロジーの思想は培われてきたのではないか。そういった見通しの下、17世紀から20世紀に描かれた美術作品に焦点を当て検討する。優れた観察者で、記録者だった画家たちはその変化をどう描いただろう。新たな西洋美術の見取り図を提案する。
目次
第1章 かつて地球は寒かった―小氷期とコロニアリズム
第2章 エコロジーとエコノミー
第3章 火山の噴火
第4章 アルプスの氷河
第5章 産業革命の表象
第6章 霧のロンドン
第7章 印象派と大気汚染
著者等紹介
岡田温司[オカダアツシ]
1954年広島県生まれ。京都大学大学院博士課程修了。京都大学名誉教授。現在、京都精華大学大学院特任教授。専門は西洋美術史・思想史。著書『モランディとその時代』(人文書院)で吉田秀和賞、『フロイトのイタリア』(平凡社)で読売文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Go Extreme
1
https://claude.ai/public/artifacts/941052db-f19f-4f94-9e0b-dec74fd049e8 2025/06/30
げんさん
1
ゴッホの「石炭袋を運ぶ坑夫の妻たち」など。画家は炭鉱労働者たちの気持ちにできるだけ寄り添おうとしているのだ。2024/11/19
yuka_tetsuya
1
人類が起こした急激な地球環境の変化を、芸術の観点から俯瞰した良書。美術に不案内なので、多くの作家名は初耳であったが、その時を生きた人々が、美的感覚で社会の変化や不安を描き、そこに批判精神を載せている事がよく分かった。今後美術館などで絵画を鑑賞する際には、その奥にある時代背景や作者の思いに心を馳せたいとおもう。スモッグが印象派の柔らかい光の表現に影響を与えたという見方は衝撃的であった。2024/11/09
Shinjuro Ogino
1
人新世とは、概ね200年前の産業革命以降現代までを指すとして、近年提唱されている新たな地質学上の時代区分。本書は、その時代の芸術の特質を説明する。しかし、現代美術や抽象画などは対象とはせず、人類と地質等との(相互)影響の視点からの各種トピックが取り上げられている。面白かったのは、産業革命による大気汚染で光が分散し風景がぼやけたことから、特に印象派の描き方に影響を与えたこと。スモッグにより生ずるロンドンの霧は、多くの画家に愛された。例えばモネは、ロンドンに滞在中、霧の状況変化に熱中したという。2024/08/12