出版社内容情報
あるべきかたちに回収されない愛の倫理とはなにか。暴力の渦中にあるの語りから、の応答可能性を考える刺激的な論考。
内容説明
DV(ドメスティック・バイオレンス)に代表される、暴力関係から逃れられないひとには、実際、何が起きているのか。問題系を前提とした“当事者”ではなく、特定の個人に注目した“当人”の語りから議論を始めたとき、“第三者”は、どのようにして応答することができるのか。本書は、「なぜ暴力関係から逃れられないのか」という問いへの通説的な見解に対して、再考を迫る。あるべきかたちに回収されない異なるエートスを探求する、刺激的な論考。
目次
第1章 なぜ暴力関係から逃れないのか“通説編”―専門家らによる見解
第2章 なぜ暴力関係から逃れないのか“異端編”―語られる歪な愛
第3章 分離とは異なる解決策―DVと修復的正義
第4章 暴力的な存在と社会的排除―トルーディ事件を考える
第5章 生きのびるためのアディクション―自己治療・自傷・自殺
第6章 介入と治療からの自由
著者等紹介
小西真理子[コニシマリコ]
1984年、岡山県生まれ。立命館大学大学院先端総合学術研究科修了。博士(学術)。現在、大阪大学大学院人文学研究科准教授。専門は臨床哲学、倫理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Bevel
7
暴力的な関係の「被害者」のなかの譲れないものを、丁寧に留保をつけたうえで、開いていく本。エルスターの「適応的選好形成」批判はわかるなあって。あと上間陽子の「七海」の事例は、短いのだけどありありと光景が浮かんで、読んでいて心が苦しくなる。自分らしい死に方を常に探してるタイプの人間が世の中にいて、その人の生き延びの矜持みたいなのも大事にされてほしいなって。2024/02/07
おさと
4
思ってた内容とは違うけれども。こういう研究が困ってる人の役に立つとよいなと思う。2024/01/01
ソーシャ
3
ひどい目に遭っているはずの虐待やDVの当事者が周囲の第三者による支援を拒むことがあるのはなぜなのかを具体的な事例をもとに当事者の視点から考察した一冊。合理的な考えでは目が向けられない、ドロドロした関係性に正面から向き合っていて、読みやすいのですが独特の読後感があります。わたしは合理的な立場からアドバイスする立場で、著者の意見には賛成できないところもありますが、当事者の視点を知るという意味で有意義な本でした。倫理学理論の中でケアの倫理のイメージはあまりつかめなかったのですが、こんな応用方法があるのですね…2023/11/26
バーニング
2
支援とは何か、人を救うとは何かを問い直す一冊。暴力の被害者をいかにして守るかが公的支援の分脈では重要視されるが、本書はそれ一辺倒では救いきれない当事者の主観性に焦点を当てた一冊だと解釈した。暴力の先に被害者が命を失うとしても、それ自体(救命できなかったこと)を否定しないという本書の姿勢は非常にラディカルに見える。ただ、第5章「生きのびるためのアディクション」を読んでいて、生きのびることへの強いこだわりは逆に生きのびれなかった人の存在否定するのではないかという著者の主張を聞いてはっとさせられる思いがした。2025/01/29
saiikitogohu
2
【分離ではなく、関係性やつながりを保つなかで、解決の道を探りたいと願う声もあることも、私たちは聞き逃してはならない…支援者を裏切って加害者を庇ったり加害者のもとに戻ったり、支援者のもとへの再訪を拒絶したりするような「恩知らずの被害者」とされる人が、「自分が本当に考えていること」を当然のこととして話すことができる支援の現場があれば、より多くの人が支援によって救われるだろう】46【応報的正義では、…加害者と国家との戦いのなかで、責任を決定して苦痛を科する…修復的正義では…コミュニケティの回復や和解を進め】782024/03/16