出版社内容情報
北京が中国の首都であり続けてきたのは、「都城」だったからである。中華世界の中心として歩んできた波瀾万丈の歴史をたどり、伝統中国の文化の本質を追究する。
内容説明
黄河文明の辺境に位置し、江南文化とも遠く離れた長城地帯に近接する政治都市・北京。古代国家の首府でもあったこの地は、「中華世界」の拡大とともに、いかにして辺境の地から中心地へと飛躍してきたのか。古代から現代まで長きにわたるその歴史をダイナミックに描き出す。漢族と非漢族、農耕と遊牧という対立する要素が交流・融合する、坩堝としての都城が果たした役割にも注目。多民族国家中国の首都に選ばれ続けてきた波瀾万丈の歴史から、伝統中国の政治文化の本質に迫る。
目次
第1章 文明の辺境―燕国
第2章 東北の重鎮―幽州
第3章 諸族争奪の舞台
第4章 中都から大都へ
第5章 華夷一統のために
第6章 拡大された中華帝国
第7章 皇帝の住まなくなった紫禁城
終章 廃墟からの再生
著者等紹介
新宮学[アラミヤマナブ]
1955年、山形県生まれ。東北大学文学部卒業。同大学院文学研究科博士課程単位取得退学。国士舘大学文学部講師をへて、山形大学人文学部助教授、人文社会科学部教授を歴任。山形大学名誉教授。博士(文学)。専攻は十四~十八世紀の中国近世社会史、中国都城史、東アジア比較都城史研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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よっち
29
黄河文明の辺境に位置し、江南文化とも遠く離れた長城地帯に近接する政治都市・北京。多民族国家中国の首都に選ばれ続けてきた波瀾万丈の歴史から、伝統中国の政治文化の本質に迫る一冊。燕の薊城から中原諸王朝の前進基地とされた幽州時代、安史の乱と燕雲十六州問題、元の大都建設から永楽帝の北京遷都、そして明清交替から紫禁城を巡るあれこれなど、漢族と非漢族、農耕と遊牧という対立する要素が交流・融合する、坩堝としての都城が果たした役割があって、そこに首都としての価値を見出すようになってゆく時代の変遷がなかなか面白かったです。2023/10/09
鯖
19
農耕民と遊牧民、漢民族と異民族が交わる北京からみた中国の歴史。がっつり厚めで読み応えもたっぷり。大陸時代劇を色々みたのでオイラト族とか安禄山とか出てくるたびにアーあのあたりかあってなる。秀吉の朝鮮出兵、後陽成帝を北京にすまわせるとかめっちゃくちゃだったことは知ってたけど、紫禁城で日本人捕虜61名が処刑されたとか知らんかったな…。やっぱり秀吉すきくないなとか北京の歴史を読んで思うのであった。1000年くらいにポロ(撃球)の競技場があったっていうのはこないだの大河でポロやってたのと同じくらいの時期かあ。2024/04/13
MUNEKAZ
17
古代から現代までの北京の通史。いにしえの殷・周の時代から説き起こしており、北方の遊牧勢力に備えた辺境の軍事拠点から、遊牧世界と農耕世界の両方を支配する中華世界の都へと変貌していく様が掴みやすい。また北京が帝都として発展する契機として、遼朝の五京制による「南京幽都府」の設置(北京だけど南京!)や金朝の海陵王が行った遷都など、いわゆる征服王朝による北からの動きが、大きな画期となっているのが印象に残った。中原にとどまらない多元的な中華世界を統べる都市として、境界地帯に築かれた北京の歴史的な意義が面白い。2023/09/29
さとうしん
13
農耕文化と遊牧文化とが接触する境界都市としての北京の歴史を新石器時代から現代まで辿っている。燕国が置かれた西周時代など、古い時代についてもガッツリ書いていて読み応えがある。また都城の構造だけでなく明清の紫禁城の双肩 構造についても詳述している。明清以前では、安禄山が北京地区に強いアイデンティティを持ち、北京の地域性が安史の乱のバックボーンとなったことや、金の海陵王による中都(=北京)への遷都に彼の先見性を評価しているのが面白い。2023/09/19
電羊齋
11
農耕文化と遊牧文化との境界、そして拡大した「中華世界」の中心点に位置する北京の歴史を綴る。近年の考古学的成果もよく盛り込まれている。契丹、女真、モンゴル、満洲など北方の動きが北京の歴史の画期となってきたことに注目しており、面白く読めた。特に金の中都の建都を北京の歴史の大きな画期として位置づけ、詳述しているところは興味深く読めた。また、著者の専門分野でもある明清北京城に関しても豊富な史料が引かれ、読み応えがあった。2023/12/15