出版社内容情報
住宅、農地、震災、運動、行政、アジア…戦後の都市・近郊空間と社会を考える。 執筆:青井哲人、市川紘司、内田祥士、中島直人、中谷礼仁、日埜直彦、松田法子
内容説明
冷戦、高度経済成長、持家社会、革新自治体、バブル経済、アジア戦後賠償、農地の宅地化、東日本大震災…終戦から二一世紀の現在まで、戦後の日本の都市・近郊空間はさまざまな出来事を経験し、大きく変容してきた。本書では、その戦後のあゆみを建築や都市の研究者が、社会や世界情勢、歴史的事件を含めて多角的に検討する。変質しながらも生き続ける戦後を思考する画期的試み。
目次
第1章 民衆・伝統・運動体―冷戦と復興、文学と建築、リアリズムとモダニズム
第2章 技術・政策・産業化―一九六〇年代、住宅の現実と可能性
第3章 革新・市民・広場―人間性の回復を目指した革新都市づくりのレガシー
第4章 バブル・震災・オウム真理教―二〇世紀末、流動する戦後空間と建築
第5章 賠償・援助・振興―戦後アジアにおける日本建築の広がり、およびそれを後押ししたもの
第6章 都心・農地・経済―土地にみる戦後空間の果て
終章 引き裂かれる戦後空間
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kana0202
2
シンポジウムのまとめ的な部分もあるので読みづらいところもあるが、非常に興味深い論点が多数あり。住宅の老化とコストの問題と、ポスコロ建築における援助と開発の事実が興味深かった。オウムを論じた中谷の章は、思想史的な都市論で、嫌いなタイプ。文学との関わりを論じた青木の章も、興味深いが、ただ並べただけという感じが否めない。実学に基づいていない建築系の人は好ましくない。2023/04/28
お抹茶
1
思想と建築を融合する論考。革新自治体,バブル,オウムなど,その時々の世の中を象徴するようなできごとと建築の関係を見る。こういう分析は好みがわかれるかもしれない。「関心のない領域には手を伸ばさない新自由主義体制では,開発独裁的な体制よりも,人々が空間と社会を独自に組み替えているのかもしれない」という見方はなるほどなと思った。2023/07/10