出版社内容情報
20世紀を主導したアメリカニズム。その根底には何があり、どのように変わろうとしているのか? 宗教的観点からも探究した渾身作!
内容説明
二〇世紀をリードしたアメリカ文明も、近年、動揺を来すようになった。9・11同時多発テロ、ポピュリズムの台頭、COVID‐19の世界的流行、そしてGAFAに象徴されるテクノロジーの支配…。アメリカニズムは今、どこへ行こうとしているのか?そもそも、その根底には何があるのか?現代社会を突き動かす「総かり立て体制」、社会に底流し続け、時に政治をも動かす宗教。この二つの視軸から、転換期のキリスト教文明に光を当て、「ポスト・アメリカニズム」の世紀を展望する渾身作である。
目次
プロローグ 9・11テロの刻印
第1章 「現代文明」の形成と動揺
第2章 アメリカニズムとキリスト教文明
第3章 テロリズムと公共宗教
第4章 リベラリズムと政教分離
第5章 ネオリベラリズムと福音派
第6章 ポピュリズムと文化戦争
第7章 マルチカルチュラリズムと世俗主義
エピローグ パンデミックが問いかけるもの
著者等紹介
藤本龍児[フジモトリュウジ]
1976年、山口県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。博士(人間・環境学)。社会哲学・宗教社会学を専攻。現在、帝京大学文学部社会学科准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
川越読書旅団
24
9.11、トランプ政権、COVID-19パンデミックなど21世紀初頭の大きなトピックを通じ、宗教(キリスト教)大国アメリカが変容して行く様をネオリベラリズム、ポピュリズム、そしてマルチカルチャリズムなどの視点から描く、今の、そしてこれからのアメリカの理解の一助となる良作。2021/06/19
紙狸
12
2021年5月刊。筆者は宗教社会学者で以前、2016年の米大統領選のトランプ現象の鮮やかな分析を発表していた。それでこの本に取り組んだ。これは文明論だ。自分の頭で考え抜いた産物だ。最初と最後に2001年の米同時テロの話が出てくる。21世紀のキリスト教文明はどこに向かうのか。底流に迫る。「近代化=世俗化=宗教の衰退」という通念に対して、丁寧に反駁していく。ハイデガーやマックス・ウェーバーが引き合いに出され、易しくはない。ただ、筆者の一貫した思考があるので、読んだ後、前進感を味わうことができた。2021/06/21
うえ
8
アメリカ自己認識の変貌を追う「アメリカは、多種多様な文化をもった人びとの集まる移民の国にほかならない…しかし、こうしたアメリカ像なり歴史理解は、トランプ派には共有されていない。もちろん、かれらも移民の子孫である。しかし…反トランプ派とは対立するナショナルアイデンティティや歴史観をもっている、と言ってもよい。それが文化戦争の基層をなしている。たしかにアメリカは、歴史を通じて多くの移民を受け入れてきた。しかし同時に、そうした多文化社会だからこそ、国民が分断されないように、連帯や統合の原理が問われ続けてもきた」2022/06/06
なんか妖怪
0
ハイデガーやが警鐘を鳴らした「総駆り立て体制」と、キリスト教的な文明成長観、そしてアメリカニズムと、共通項を感じながらもそれらを結びつける文脈を自分で考えるのは容易ではなかった。 自分の「キャラクターを通して表現される固有性」に見い出す希望も、この書で語られているキリスト教的な文明論を乗り越えるものとして位置づけて語っていきたい。2021/08/03