出版社内容情報
「日本人」であることを証明するのが戸籍とされる。だが天皇家の人々は戸籍をもたない。その根底には何があるのか。現代日本をも貫く家の原理を剔抉する。
内容説明
「日本人」たることを“証明”する戸籍、戸籍をもたない天皇家―。どちらも「血統」、「家」の存続といった原理に支えられてきた。天皇制と戸籍は、いかなる関係にあるのか?その根底には、何があるのか?古代に始まり、世界に類を見ない日本独自の制度でありながら、正面から問われることのなかった難問に挑んだ、渾身の書!
目次
序章 天皇家と戸籍へのまなざし
第1章 戸籍なき天皇家
第2章 「皇統譜」とは何か―天皇家の系譜
第3章 「臣籍降下」の歴史―「皇籍」と「臣籍」のあいだ
第4章 天皇家の結婚
第5章 家の模範としての天皇家
終章 天皇と戸籍のゆくえ―支え合う二つの制度
著者等紹介
遠藤正敬[エンドウマサタカ]
1972年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。博士(政治学)。専門は政治学、日本政治史。現在、早稲田大学台湾研究所非常勤次席研究員。宇都宮大学、埼玉県立大学、東邦大学等で非常勤講師。著書に、第三九回サントリー学芸賞を受賞した『戸籍と無戸籍―「日本人」の輪郭』(人文書院、2017年)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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こーた
254
天皇のまわりが騒がしい。退位と即位があり、写真を焼くアートが問題視され、内親王の婚姻はいまだ許されず、女性宮家の議論はいっこうに進まない。国民の象徴であるにもかかわらず、天皇とその家族は戸籍を持たない。なぜか。そもそも戸籍は、天皇の臣民を記した名簿にその起源をもつ。氏姓は天皇に与えられるもの。だから皇族は名字を持たない。つまり戸籍もない。代わりに皇統譜というものがある。万世一系、脈々とつづく王の系譜だ。それは戸籍とよく似ているが、もちろん違う部分もある。その違いが権威となって神格化され、またときに利用⇒2020/03/12
たか
5
戸籍制度という日本独自のシステムを、「天皇は戸籍をもたない」という事実から解明していく。軽い興味で読み始めたものの丁寧すぎるくらい丁寧で少し重たく感じたが、その分歴史がよく分かり説得力がある。「血統」という概念はある種の共同幻想であり、それは皇族においても例外ではない。古くからごまかしながらもゆるく繋がり続けて、明治時代に神格化され、戦後修正されたもののその精神は残り続けている。現代の価値観との矛盾が見え隠れする危険な領域も、事実を積み上げ淡々と論じられているのがよかった。2021/04/28
akio numazawa
2
全ての氏族に対して超然と聳え立つ天皇家は氏姓も戸籍も持たない。 日本を一つの家に見立てて、天皇を家長とする国体と、戸籍、戸主制度の親和性。 戦後、天皇の神格は否定されたが、天皇制と結合した家族国家思想は、その基軸を現人神から象徴天皇へと変えて生き残った。2020/03/21
Masataka Sakai
1
戸籍がないとはおどろきです2020/02/12
シマ
0
天皇は戸籍も氏姓は持たず、それを与え管理する。その天皇には皇統があり、男系の血統によって継続している、とされている。しかし7代さかのぼれば、128名の祖先がいることになるのだから、特定の人物だけを祖先とするには科学的根拠がないだろう。そして天皇は姓を持たないのだから、皇室に入る(女帝の皇婿であっても)というのは姓を失うことになり、異姓とはならないはずだが…。そして明治民法までは夫婦の姓は別姓が原則であり、戸内で姓を統一するのは姓の習慣に合わない、とした井上毅は個人の血筋である姓を重視していた、という。2023/02/17