内容説明
日本人にとって最も身近な宗教者の一人、親鸞。その生涯には不明な点も少なくない。にもかかわらず、日本人は親鸞について、さまざまなことを語ってきた。親鸞の死後、浄土真宗の宗祖というイメージが早い段階で確立してから現代まで、親鸞を取り上げた絵巻や小説など膨大な資料を分析した本書は、「如来の化身」「法然の弟子」「説法者」「本願寺の親鸞」「妻帯した僧」「『歎異抄』の親鸞」という六つの「顔」がなぜ、いかにして形成されたのかを明らかにした。かつてない労作である。
目次
序章 あふれだす親鸞
第1章 「宗祖親鸞」の起源
第2章 「宗祖親鸞」の決定版とは?
第3章 「妻帯した僧・親鸞」の誕生
第4章 「『歎異抄』の親鸞」と「私の親鸞」
第5章 大衆化する親鸞
第6章 現代の親鸞像―五木寛之から井上雄彦へ
終章 日本人はなぜ親鸞に惹かれるのか
著者等紹介
大澤絢子[オオサワアヤコ]
1986年、茨城県生まれ。お茶の水女子大学文教育学部卒業。東京工業大学大学院社会理工学研究科価値システム専攻博士課程修了。博士(学術)。専門は宗教学・仏教文化論。親鸞仏教センター嘱託研究員、龍谷大学世界仏教文化研究センター博士研究員を経て、大谷大学真宗総合研究所東京分室PD研究員および龍谷大学、同志社大学非常勤(嘱託)講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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棕櫚木庵
22
1/3) 歴史上の物事について,それが実際にどうであったかということと共に(いや,それ以上に?),それがどのようなものだと思われていたか(受容史),あるいは,どのようなものであるべきと考えられていたか(理念史)ということに興味がある.本書は,そんな私向けに(え?^^;),親鸞の実像ではなく,親鸞がどのような人物として語られ,理解されてきたかを「六つの顔」として論じている.▼以下:要旨.2022/09/10
kenitirokikuti
6
他のレビューによると梅原猛『親鸞「四つの謎」を解く』をもじったタイトルらしい▲吉川英治の代表作は『宮本武蔵』だが、同時に書かれたのが『親鸞』である。平成になって、五木寛之による新聞小説『親鸞』があり、その挿絵は山口晃だったけれども、井上雅彦『バガボンド』(吉川『宮本武蔵』ベースの漫画)ふうだった(そういや、宮部みゆき『荒神』挿絵は、こうの史代だったナ)▲「妻帯」ってのは肉食(にくじき)」と同じで、日本人の生き方としてはもう大きなテーマにならないなぁ。2019/08/25
Sleipnirie
2
浄土真宗に関係ある人も無い人も親鸞を自由に語る。現代では歎異抄をもとにしているが、それは明治以降にはじまった。 語られる親鸞の像を6つに分類して中世→近世→近現代と変遷をなぞり現代人が必要としている親鸞像について考える。 浄土真宗を本願寺を中心とした集団としてまとめるために作った中世、妻帯を正統とさせる江戸期、歎異抄を独自解釈した戯曲の大ヒットが"わたしの親鸞"ブームを巻き起こす明治大正期、そして五木寛之『親鸞』へ。 明治大正期の独自解釈ブームを嫌った真宗側がその流れをくむ現代の解釈を受け容れてる。2021/03/06
読書一郎
0
今でも人気の高い浄土真宗の開祖・親鸞。 『歎異抄』で知られ、煩悩に悩む人間くさい僧、という印象ですが、実はこれ、明治以降に出てきたイメージだそうです。世間の「親鸞像」がどう作られていったのか。曾孫が書いた伝記から五木寛之、井上雄彦まで、その変遷を丁寧に追った本です。 タイトルは梅原猛『親鸞「四つの謎」を解く』のもじりっぽいですが、誰も気づかない気もします(笑)。2019/08/21