出版社内容情報
建国の源泉に「抗日」をもつ中国。この心性は五四運動を起点とするが、当初は単なる拝外主義ではなかった──。新史料をもとに、中国のジレンマを読み解く。
内容説明
ナショナリズムの中核に強烈な「抗日」感情をもつ国・中国。その起点は五四運動にあるが、それは単なる排外主義運動ではなかった。陳独秀、李大〓(しょう)、魯迅など、五四運動を主導した知識人は、いずれも日本への留学経験があり、大正デモクラシーに学ぶ意欲をもつ「知日」派でもあったからだ。建国の原点に位置づけられる五四運動は、「抗日」と「知日」の一見相反する対日感情をあわせもち、その後の中国のジレンマの原型をなしていた―。二〇一九年に百周年を迎える五四運動。中国を規定するこの歴史的事件を、あらたな角度から分析することで、中国の複雑な対日感情の構造をあざやかに透写する。
目次
はじめに 現代中国の原点としての五四運動
第1章 五四運動と対日感情
第2章 清末の教育改革と日本
第3章 中国人の日本留学
第4章 中国の日本人教師
第5章 中華民国の誕生と教育改革
第6章 五四運動と日本
おわりに 五四運動の遺産
著者等紹介
武藤秀太郎[ムトウシュウタロウ]
1974年生まれ。専門は社会思想史。早稲田大学政治経済学部卒業。総合研究大学院大学文化科学研究科博士課程修了。学術博士。現在、新潟大学経済学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さとうしん
8
タイトルにある「抗日」中国や五四運動を主題とすると見せかけて、最終的には初等教育に力を入れたと日本と高等教育に力を入れた中国という話に収斂していくという、何だかよくわからない構成の日中交流論。「孔子の道」による徳育と目上の人間への服従を説く嘉納治五郎に対する楊度ら中国人留学生の反発など、辛亥革命の前後の日本側と中国人留学生との間のボタンの掛け違いの話を面白く読んだ。2019/02/17
nori_y
1
戊戌政変辺りから五四運動までの日中関係を、主に留学生や留学事業・教育に携わった人物を中心に分かりやすく見ていく一冊。ほぼ何も分からぬ状態から、五四運動は上流知識人による革命から真の革命への転換点である(by毛沢東)ということと、主要人物については大体把握できる。今後、「知中」日本人の圧倒的不足が両国のすれ違いを重演しないことを切に祈るしかない。田漢の詩にはちょっと涙ぐんでしまった。学術書で泣くとは??と我ながらツッコミつつ。2021/01/27
yoneyama
1
五四運動から100年なので読んだ。中国の民主化人物伝としての内容も、40代の著者が、現代中国で五四運動がいかに大きく扱われているか、最近の映画や文物、出来事を引用しながら紹介する、関わりやすい内容。100年といえど、やはり日本では無関心。五四運動に関する本は21世紀以降あまりないのかあ、とあとがきで知る。「知日」はあれど「知中」が圧倒的に少ない。2019/06/26