出版社内容情報
憲法に対し日本人は、いかなる態度を取ってきただろうか。世論調査を徹底分析することで通説を覆し、憲法観の変遷を鮮明に浮かび上がらせた、比類なき労作!
内容説明
過去70年にわたる世論調査のデータを徹底分析、戦後日本人の憲法観の変容を明らかにし、通説を覆す。改憲論義が高まるいま、必読の書!
目次
第1章 「世論」不在の憲法論争?
第2章 改憲論優位の時代―占領期から「逆コース」の時代へ
第3章 脱イデオロギー化する憲法問題―高度成長期から五五年体制の崩壊へ
第4章 瓦解する「改憲派連合」―小泉改革から政権交代の時代へ
第5章 誰がなぜ改憲に賛成してきたのか
第6章 憲法意識の安定性と変化のしくみ
第7章 憲法と世論のゆくえ
付録 世論調査データの収集方法
著者等紹介
境家史郎[サカイヤシロウ]
1978年、大阪府生まれ。2002年、東京大学法学部卒業。2004年、東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。2006年、カリフォルニア大学バークレー校修士号(政治学)取得。2008年、東京大学博士(法学)取得。日本政治論、政治過程論を専攻。東京大学社会科学研究所准教授等を経て、首都大学東京准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
36
本書の目的:戦後憲法論争における欠落部分を埋めること。世論という要の理解を欠いた「空中戦」に終始してきた。戦後日本人の憲法観について体系的知見を得て、建設的な改憲論議の前提をなす、確固とした基盤を提供すること。データと歴史で新たな憲法論を提示する(027頁)。1950年代の改憲運動が頓挫した要因は、保守勢力内の足並みの乱れと改正発議要件(96条)の厳しさ(101頁)。近年とくに検討が進んでいる論点として「緊急事態条項」追加論がある。2017/12/21
那由田 忠
13
戦後70年の世論調査を丁寧に調べて、日本人の憲法意識と政治状況の関係を読み解いた貴重な著作。現代政治史を憲法改正意図の視点から分析することができる。日本人はほぼ一貫して憲法を疑問視(改正の検討)してきたと言える。しかし、それは憲法全体の大改正から、9条を中心にした改定や政治体制の変更へと動いてきた。最近も政治体制への不満から改憲論が高まった時期があったが、今は9条中心で見ている。最後にある世論変動のあり方や、エリートと大衆の相互影響などの学問的成果の紹介がきわめて面白かった。一読の価値ある本と思う。2020/04/30
himawarisun6
8
世論調査の信用性はその調査方法を含め疑問があったが、著者はデータをうまく分析して当時の風潮や個人の意識を考察していると思った。 現在の憲法改正議論では、過去の世論調査をつまみ食いしただけの分析が根拠にされているとの指摘は納得。自分に都合よく解釈せずきちんと時代背景や調査方法を考慮して利用してほしいと思う。 また、故意か知らないが世論調査が未だに曖昧な質問で回答者に誤解させるのはどうにかならないのだろうか。 最後に、国民の意思を信頼するためにもまずは自分の情報不足・意識不足を改めていきたい。2018/04/01
Naoya Sugitani
5
憲法と世論調査の関係を描く一冊。まず驚いたのが「日本国憲法制定時、その平和条項を多くの国民が支持した」というのがほとんど根拠のない議論であるということ。戦後史の叙述で当然のように出て来るだけに、この箇所が一番衝撃的だった。その後も憲法に関する誤った見識を徹底的な世論調査の分析を通して正していく叙述が続く。例えば湾岸戦争以降の自衛隊海外派遣論などの議論を通して改憲論が高まったという議論にも著者は疑問を投げかける。この議論を早急に研究者は議論に取り込んで、叙述を改めていく必要があるだろう。2018/03/07
takeshi3017
4
世論調査のデータを徹底的に分析し恣意的な解釈を排することによって憲法に対する各時代の考え方が見えてくる。詳細→http://takeshi3017.chu.jp/file7/naiyou25001.html2018/02/12