出版社内容情報
ブッダ入滅の数百年後に生まれた大乗経典はどんな発想で作られ如何にして権威をもったのか。「仏伝」をキーワードに探り、仏教史上の一大転機を鮮やかに描く。
内容説明
日本仏教の源流にある大乗仏教。しかし、その経典群は、ブッダ自身が説いたものではない。ブッダ入滅後、数百年後に作られたものなのだ。どうしてそのような文献が、権威を持ち、仏教史の中で大きな影響力を持ったのか。また、それらはどんな材料やどんな論理で制作されたのか。ブッダの思想やブッダの伝承とどのような関係があるのか。「仏伝」をキーワードに、仏教思想の一大転機を実証的に探りつつ、そのダイナミズムを明らかにする。
目次
序章 問題の所在
第1章 仏教理解の基盤
第2章 大乗仏教成立の前提
第3章 主要な大乗経典と仏伝
第4章 法華経と仏伝
終章 大乗仏教、そして大乗経典とは?
著者等紹介
平岡聡[ヒラオカサトシ]
1960年京都市生まれ。佛教大学文学部仏教学科卒業。ミシガン大学アジア言語文学科留学。佛教大学大学院文学研究科博士課程満期退学。京都文教大学教授を経て、京都文教大学学長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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bapaksejahtera
10
仏陀涅槃後数百年を経て、その弟子達が著した大乗経典群は、部派仏教を始めとする伝統仏教を止揚せんと試みた思想的営為だとする。本書後半ニカーヤなど伝統経典に盛られた仏陀前世の燃燈仏からの授記に始まり、成道、梵天勧請、初転法輪を経て涅槃に至る仏伝の展開を、大乗経典群が盛込んでいる事を述べ、最後にこれを骨格さえする法華経に克明な論証を施す。著者は大乗思想を、仏陀入滅後は沙門が阿羅漢果声聞果を得るに留まる伝統仏教を解放する物と視る。釈迦の時代、仏陀声聞阿羅漢は無論、如来さえ同義とされた時代へ仏教者を解放する運動だ。2024/11/21
nizimasu
5
仏教というのは何とも不可解というのか人によって解釈が随分違うなあという問題意識から手に取ってみてかなり疑問も氷解した。大乗というのは仏陀を超人的な人格としてとらえるのかあるいはサンガ(出家者集団)を率いていた人間としての捉え方の違いが大きいようだ。お布施を巡る金銭の授受を認めるか否かというのが根本分裂の大きな要因だったのだろう。他にもストゥーパを巡る遺骨が仏陀の本性なのか違うのかなんかの議論は仏像の誕生とも関連しているエピソードのようで興味深い。転生についての考えの違いも根本部分はこの辺がきっかけのようだ2015/11/09
Go Extreme
3
問題の所在: 初期経典と大乗経典との溝 大乗仏教研究史 仏教理解の基盤: インド仏教史 仏教の典籍 ブッダの生涯 大乗仏教成立の前提: 仏―ブッダの死と仏身観の変遷 ブッダの死を巡る解釈―無仏の世か有仏の世か ブッダ観の変遷 僧―伝統仏教教団との思想的対立 三乗 一世界一仏論 主要な大乗経典と仏伝: 大乗経典研究の基本的手法 燃灯仏授記にはじまる成道と救済 本生菩薩の追体験 降魔成道 涅槃 法華経と仏伝: 法華経と仏伝との対応 法華経の成立・構造・編纂の意図 大乗仏教、そして大乗経典とは2024/09/04