内容説明
北軽井沢高原の山荘で過ごす夏から秋へ、散歩と手習いを日課とし、ひとり手料理の夕餉の膳に向いつつ、来し方を思い、生き方を考える。自ら厨房を愛する著者が、食べ物を通して人生の機微にふれた、愉しく味わい深い名エッセイ集2冊を1本とする。「厨に近く」には、自筆の挿画50枚を収める。
目次
山中独膳(飲啄の記;独習家事;山家のご馳走;酒三題;かぶりつきにて ほか)
厨に近く(高原の秋;冬瓜;鮭をもらう;空蝉;白桃;枝豆;拓榴;魯迅の愛した酒家 ほか)
感想・レビュー
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きゅー
8
著者の小林勇は岩波書店創業者となる岩波茂雄の次女と結婚し、編集者として岩波文庫創刊に関わるなどした。後には岩波書店の会長にもなった。本書を読むと、たんに縁故で出世したのではなく、小林自身の資質と努力により岩波書店を盛り上げていったのだろうと容易に想像された。食べ物に関する随筆ということにはなっているが、その中で当時の文壇の錚々たる名前が随所に出てくる。幸田露伴、中谷宇吉郎、寺田寅彦、中野好夫、三木清といった名前が同時代の、しかも深い付き合いのあった仲間として出てくるのをうっとりしながら読ませてもらった。2020/11/19