内容説明
温かいスープには、なにか特別な力がある。自分の人生を、毎日のできごとを、そのままひと皿に閉じ込めたような。コトコト音をたてる鍋を見守る時間は、物思いにふける大事なひととき。できあがったスープを味わえば、深い滋味が心とからだに沁みわたる。古今東西、そして家庭ごとに、そこにしかない味があり、人の数だけ物語がある。そんなスープのエッセイ41篇のアンソロジー。
目次
スープ七変化(阿川佐和子)
出汁のない味噌汁(西加奈子)
兎亭のスープの味(遠藤周作)
スープは音を立てて吸うべし(三島由紀夫)
ミネストローネのせめぎあい(有賀薫)
おいしく豊かな水だし生活(内館牧子)
拾った魚のスープ(伊丹十三)
春雨と椎茸と蟹のスープ(宇野千代)
だしの取り方(北大路魯山人)
泰然自若シチュウ(宮下奈都)
わが工夫せるオジヤ(坂口安吾)
ミキサーでスープ(吉沢久子)
三月の章(抄)(水上勉)
何もかもわずらわしいなあ、と思う日に(小林カツ代)
ブイヤベースの黄色(三宅艶子)
コンソメスープの誇り(稲田俊輔)
ブイヤベース・ア・ラ・マルセイエーズ(長田弘)
八十翁の京料理(抄)(丸谷才一)
骨まで喰いますドーム基地(西村淳)
「食らわんか」(抄)(向田邦子)〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
131
おいしい文藝シリーズとは違うのか?(よくわからないのは大人の事情?)それはさておき(おくんか~い)本アンソロジーはスープ!その響きだけであったまる感じが好いね。41人の41篇それこそ色々だ。『心とからだにしみてくる』とある。どれも楽しく読んだ。まずは今晩お疲れの夫の為に豆腐のポタージュ(高山なおみさん)を作るとしよう。2025/01/24
taraimo
20
それぞれの著者の想い出のエピソードが加わるとまた違った逸品の印象に。ブイヤベースの定義にこだわる人と、そうでない人がいて面白いです。時代とともに変化し多様化する今日では、スープの概念も覆され、自由な発想でオリジナルな味への探求は果てないと思います。そんな中で、昔ながらの洋食屋さんのシンプルでありながら、丹念に仕上げられる琥珀色のコンソメスープが遠く幻になりそうで、恋しいです。自動販売機の缶スープは、改めて探してみると出合えなかったり……片手に肉まん、白い湯気と息で手を温め、足踏みをした懐かしい記憶が(笑)2025/02/23
たっきー
14
スープにまつわるエッセイ。41編収録。面白かったのは水上勉「三月の章(抄)」で、イギリスの劇作家が高野豆腐の煮物の煮汁を素晴らしいスープだと絶賛したというもの。美しくて人たらしな文章だなと思ったのは向田邦子、森茉莉、金井美恵子、江國香織。2025/03/12
Nobuko
9
今昔ジャンル多様なアンソロジー 一口にスープといってもいろいろあるなぁ・この季節特にスープはうれしい2025/01/18
プクプク
8
寒い日には温かいものが欲しくなる。お味噌汁でもなく、鍋でもなく「スープ」という言葉の響きが魅力。41篇のアンソロジー。ずいぶん年上のもうお目にかかれない人の作品も収められている。懐かしい方のお料理も思い出も登場するのでその時代が懐かしく感じた。そして、クスッとなったのは、自動販売機の缶スープ、確かにあった〜今もあるのかな〜コーンの粒が缶の中に残ってもったいないな〜と思ってた記憶。写真も挿絵もなく、文字だけで出汁やスープが表現されて、それでも温まった。2025/02/27