出版社内容情報
『活版印刷三日月堂』著者、新シリーズ始動! 書店員の職を失った一葉は、連句の場のもたらす深い繋がりに背中を押され新しい一歩を踏み出していく。温かな共感と勇気が胸に満ちる感動作!
内容説明
書店員の職を失い途方に暮れる一葉が出合ったのは、言葉と言葉が深いところでつながり連なる「連句」という不思議な場。前の句に寄り添いながら変化していき、あたらしい世界へと至る連句の体験を通して、一番にならなくてもいい自由で豊かな居場所を得た一葉は自分のペースで歩き始める―。亡き祖母から受け継いだ豊かで穏やかな縁、書店での経験からはじまった思わぬ依頼…。おぼろげに見えてきた未来へと一歩を踏み出す勇気が胸に満ちてくる、かけがえのない物語。
著者等紹介
ほしおさなえ[ホシオサナエ]
1964年東京都生まれ。作家・詩人。1995年『影をめくるとき』が第38回群像新人文学賞優秀作受賞。2016年『活版印刷三日月堂 星たちの栞』が第5回静岡書店大賞を受賞。主な作品に、ベストセラーとなった「活版印刷三日月堂」シリーズのほか多数がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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- 評価
COSMOS本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
332
連句というのがあるんだ。知らなかった。ルールがすごいね。ルールを覚えれば楽しめそう。座で連衆が巻いていくのと動じに、人も連なり縁が繋がっていく。亡き祖母の手紙が一葉(かずは)には当然見えない糸に手繰り寄せられて、「ひとつばたご」の入会とPOPライターという思いがけない道が開けてく。歳の差関係なく、みんなでお菓子を食べるなど楽しい食事会。しばらくしてないなあ。美味しい和菓子も食べたいな。ほしおさなえワールドの連句という馴染みのない場所での新たな温かく優しい物語を堪能できました。2021/05/03
さてさて
263
『句と句のあいだに集った人の想いがにじんでいる。これが連句の楽しみなのかもしれないな』。祖母の残したノートをきっかけに『連句』の集まりに参加するようになった主人公の一葉。この作品ではそんな一葉が『連句』の世界に魅せられていく一方で自らのあらたな人生に踏み出していく姿が描かれていました。『連句』の世界の奥深さにすっかり魅せられるこの作品。まさかの『食』の魅力にも溢れるこの作品。『連句』、『食』、『POP』。この作品を読むことで自分の世界がどんどん広がっていく喜び、小説を読む意義を感じた素晴らしい作品でした。2024/08/21
みっちゃん
177
読み始める前から、タイトルと表紙の美しさに目を奪われる。「連句」という、様々な決まりごとや制約の中で、そこに集う人たちに選び取られた言葉が連綿と繋がっていく、その場所はまさに「言葉の園」そして繋がっていくのは言葉だけではない。その作業はひとの心と心を繋げ、大切なひととのかけがえのない思い出、そして明日へと一歩踏み出す勇気、をも引き出していく。ほしおさんの作品に触れると優しいものが胸の中に溢れてくるだけではなく、古くから伝わる善きものはなくさずに、また次の世代へ、と繋げていかなくては、と思わせてくれる。2021/07/09
シナモン
177
優しさに包まれるような一冊でした。連句の世界は奥が深くて素敵だなぁとは思うものの、細かいルールとか覚えられそうもなく…。これから一葉といっしょに学んでいきたいと思いました。一葉のおばあちゃんセレクトの季節のお菓子はどれも上品で美味しそう。頭を使った後は殊更じんわりと心にも体にも沁みそうでした。新しいシリーズ、どんな繋がり、縁が広がっていくか楽しみです。2021/04/27
pino
143
元書店員の一葉が、亡きおばあちゃんが残したメモに導かれるように訪れた「ひとつばたご」という連句の会。そこはまさに言葉の園のよう。集う人々から生まれた言葉は、連句の決まりごとによって繋がっていきます。連句を全く知らない(センスがないので句も作れない)私ですが、その奥深さを堪能し楽しめたことは本当に良かった。物語は静かに進行しますが、縁が縁を呼び、失業中の一葉のスキルが思わぬ形で生かされる場面に胸が熱くなります。洗練された言葉や 気遣いのおばあちゃんが選ぶ四季の和菓子。人に優しくしたくなる素敵な世界でした。2023/06/17