出版社内容情報
厳重に「保護」された滅菌室にしか存在しないカエル、軍に囲まれて暮らすキタシロサイ、絶滅させた人間によってDNAから「復元」されつつあるリョコウバト……。人が介入すればするほど、「自然」から遠ざかっていく、自然保護と種の再生テクノロジーの矛盾を、コロンビア大学が生んだ気鋭のジャーナリストが暴く。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
141
「生物の多様性を保たなければならないよねー」それは(なんとなく)分かる。でもね、どうやって? 考える事にフタをしてきた事に、真っ向から切り拓いていく感じ。じゃあどう解決するの?って策が書かれてないので、もやるけど、そういう議論が無いことが問題で、その足掛かりを示しているのかも。 色々な事例、それぞれに考えさせられるけど、儂には難しくて上手く説明出来ない。と、言うか消化しきれない。けど、手に取ってくれる人が増えたら良いなって思う。
まりお
51
私達が滅ぼした、だから救うべきだ。 小さい頃から聞いて、それが当たり前の事だと教えられてきた。絶滅から救う、それはなすべき事だと。 その為にゲージの中で徹底管理される、種を残すために近しい別種と交配させる、残された遺伝子から復活させる思想と計画が立てられつつある。 これは本当に今まで生きていた物と同じなのか。そうまでして絶滅を防ぐべきなのか。2019/05/12
まるほ
50
ちょっと趣きが異なる本に挑戦。読了にエラく時間が掛かってしまったが、なかなかの“スゴ本”。▼絶滅危惧種の生物について、様々な方法で保護している現状の試みを紹介しつつ、その意義、影響を哲学的に問いかける。生命技術は遺伝子レベルまで発達しつつある現在、最終章では“ネアンデルタール人の復活”という話にまでなる。▼読了しての感想としては、人間の業の深さ、愚かさ、自然を相手にする無力さを痛感されられる。▼何とか読了はしたものの、内容についての消化度は60%ぐらいか。いつか再読してもう少し理解を深めねば、と思う…。2019/03/25
ネコベス
35
絶滅危惧種を人間が介入して保護するとその動物は自然な状態から遠ざかる。人間が種を救おうと干渉するほどその種の野性と自立性が失われるジレンマに葛藤する研究者たちを描いたドキュメンタリー。貧しい国の経済的利益と希少種の保護はどちらを優先すべきか、種の進化に人が影響を及ぼす時どの程度まで管理を許されるのか、環境と切り離された遺伝子保護に意味はあるのか等、現代人の倫理的価値判断を問う本書の読後感はひたすら重い。2019/03/02
HMax
34
「遺伝的救済」、絶滅の危機に瀕した生物を施設で保護したり、最先端の技術で再生したとしても、自然に戻すことはできない。今ある自然では遺伝的回復はできず、絶滅するしかない。人口減少が始まらない以上、動物が野生で生息できる環境がますます減っていく。今ある状態を維持すると、現環境で進化の途上にある生物の進化を止めることになる。維持しないと既存種が絶滅する。どちらを取るのかは「価値観の問題」で科学ではない。パンダが絶滅するのは嫌だが、ゴキブリは絶滅して欲しい。2018/12/08