内容説明
「商」の力で「武」の秀吉に抗った男、島井宗室。戦国時代に翻弄されたひとりの商人の数奇なる運命を、圧倒的筆力で描ききる!博多を舞台にした「歴史経済小説」、ここに開幕。第3回城山三郎経済小説大賞受賞作。
著者等紹介
指方恭一郎[サシカタキョウイチロウ]
1961年福岡県生まれ。龍谷大学文学部卒業。認可保育園園長。2004年、第11回「九州さが大衆文学賞」大賞(笹沢左保賞)受賞のほか、過去3度の「松本清張賞」最終候補(2006年、2007年、2010年)など。『銭の弾もて秀吉を撃て―海商 島井宗室』(旧題『海商―秀吉に挑んだ男』)にて、第3回「城山三郎経済小説大賞」受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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maito/まいと
5
非常に異色の歴史小説。戦国の荒波の中で奴隷にまで墜ちながらも、商人として大成していくサクセスストーリーなのかな?と思いきや、売られた先の朝鮮を、かけがえのない国として、大陸侵略を行う秀吉と対立しながら守っていくという、怒濤の反逆物語。「利休にたずねよ」を彷彿とさせる時系列を基準にした章立てや、主人公が奴隷という設定など、斬新な構成が先を読ませず、ドキドキしながら読んでしまった。惜しむらくは、朝鮮との関わりの話しが分量として多すぎて、政商時の話し(信長との絡みなど)が薄くなってしまったことかなあ。2011/10/11
うめけろ
4
島井宗室なんて、教科書で習ったかなあ?とにかく、初めて聞く名前でした。この、博多の豪商が、秀吉の朝鮮出兵の裏で、この計画の阻止に向けて大活躍していたんですね。とても面白かったです。贅沢を言えば、話が若年期から壮年期に飛んでいるのでその間も少しは知りたかったということと、壮年期についても秀吉とそもそもどう関わったのかについても書いて欲しかったですが、そうなるともっと紙面が必要になりますね。2012/08/05
siopop
3
表題を読むと秀吉と対決した商人の話のように思えるのですけど、 物語の前半はほとんどが島井宗室の伝記のような感じで書かれています。波乱万丈な感じでとても面白いです。この時代日本と朝鮮や明国は、案外近かったんだな~と感じました。 後半はいよいよ秀吉との戦い?なのですけど、直接戦う訳はなく間接的な?時間切れ引き分けを狙った話になっていました(歴史は決まっているし)、商人として時の絶対権力者に立ち向かったのですから中々の人物です。こういう歴史小説も良いな~と思いました。2013/11/20
あかんべ
3
姉川の五男に生まれ、戦にやぶれ朝鮮に奴婢として売られるシゲ。不運はここまで後は助ける人が現れて海商として政治を、影から操る。どん底の時にも助ける人があらわれるのは、人格と私欲のためでなく日本人と朝鮮の人を助けたいという心の現われだ。2011/09/22
月照彦
2
人との縁の不思議さを感じる。そして佐枝の素性を次郎右衛門から明かされたときの心情で「何が事実であり、何を知っているのか、など関係ない。人とは、いかに生きるかなのだ。」という言葉が印象深く残る。更に「商寇一人なり」として、秀吉の二度にわたる朝鮮出兵の戦を早く終わるよう、朝鮮国や民への被害を小さく済むよう、商人としての立場で最大限尽力した性根の真っ直ぐな大人物である。2013/06/27