内容説明
当事者でもないのに、なぜこれほど居丈高になれるのか?不安や恐怖、憎悪だけを共有しながら、この国は集団化を加速させていく―。取り返しのつかない事態を避けるため、今何ができるのか。
目次
第1章 「殺された被害者の人権はどうなる」このフレーズには決定的な錯誤がある
第2章 善意は否定しない、でも何かがおかしい
第3章 「奪われた想像力」がこの世界を変える
第4章 厳罰化では解決できないこの国を覆う「敵なき不安」
第5章 そして共同体は暴走する
著者等紹介
森達也[モリタツヤ]
映画監督、作家。1956年、広島県呉市生まれ。テレビ・ドキュメンタリー作品を多く制作。98年、オウム真理教の荒木浩を主人公とするドキュメンタリー映画「A」を公開、ベルリン映画祭に正式招待され、海外でも高い評価を受ける。2001年、映画「A2」を公開し、山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞する。11年、『A3』(集英社インターナショナル)で講談社ノンフィクション賞を受賞。現在は映像・活字双方から独自の世界を構築している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 4件/全4件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hamham
35
タイトルに対しての意見は同意できず。私と著者は思想が逆曲がりのようで序盤で読むのをやめようかと思ったが、ここでやめたら表紙の人のようになってしまう!と読み進め、思想は逆だけど考え方はありだねと思うほどには和解した。テロを受けても「民主主義と人道主義を推進し、開かれた社会を作ることがテロへの解答」「暴力に暴力で応えない」と首相が声明を出したノルウェーの民主主義の素晴らしさを教えてもらったのは感謝。『特別警戒実施中』は「警察官立寄所」とか「街中パトロール隊」とか「猛犬注意」と同じなのでそんな気にスンナ!2014/10/27
壱萬参仟縁
33
人は変わるのに、裁判官が矯正の余地はない、と決めつけるのはなぜか?(25頁) 何を偉そうに? 被災地で、がんばらなければ生きてゆけない状況になった人に、がんばらなくても生きてゆける人ががんばれと声を かける(116頁)。テロが起きても厳罰化や死刑制度復活を望まないノルウェーは、親鸞の悪人正機説か(269頁)。 裁判官には悪人正機説が通用しないのだろう。 2015/03/17
ぐうぐう
23
死刑制度、領土問題、9.11以後、震災以後、原発事故、オウム等々、様々な社会問題に、森達也が斬り込む。ここでの森の姿勢は一貫している。人が世間と言う集団になることで陥る共同幻想を疑うということだ。ゆえに森の主張は、世間一般の常識をことごとく裏返す。森がシニカルだからとか、天邪鬼だからではない。世間と言う集団心理を警戒しているからだ。その警戒は、いわゆる善意にまで至る。そんな森の主張に、違和感を覚える読者は多いだろう。それは、自分も含めて、共同幻想が起こす正義に毒されているからだ。(つづく)2014/04/03
fu
22
重ねるスリッパや、本人確認の印鑑など日常生活をはじめとする様々な「なんとなく」や「そういうもの」と思い込んでいることは沢山ある。それは「共同幻想」であり、思い込みと事実とが乖離しているケースがある。実際、日本の犯罪は減少しているのに、メディアはまるで凶悪犯罪が増加しているように報道する。なにも考えず全体の方向性へと安易に流されるのではなく、ちゃんと自分で考えよう。2011年首都でテロが起こった時のノルウェーの対応はアメリカと真逆であり、学ぶものがある。2014/06/15
阿部義彦
20
13年ダイヤモンド社刊。森達也さんがPR誌『経』載せたコラム「リアル共同幻想論」を加筆したもの。日本は多民族多言語ではない、集団への帰属性が高い、自己規制が強く集団で動こうとする。だから暴走しやすい、しかも検証しない。反省もしない。場違いの経済誌での連載で筋違いの反感ややっかみが多かったそうです。私にはらい病の収容施設で暮らす人を取材した回が印象的。世代的に映画『パピヨン』『砂の器』でハンセン病患者の悲惨な生活を知っていたので。ノルウェーの死刑廃止と暮らしやすさのルポもかなり響いた。思考停止に陥る前に!2024/03/17