感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
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実体論者からの虚無主義という批判に応え、著者は彼らが前提とする原因の原因や生成や消滅は存在しないと断ずる。究極的な真理(如来)を知ることは、経験を言語化する推論を限界に向かわせ、世俗的な真理(相互依存的な関係=空)に直面して初めて得られる。過ちは思考自体から発しているのであり、その拘束(輪廻の鎖)を超える直観知(涅槃や解脱)は言葉によってはもたらされない。「悟り」と呼ばれる形而上学的次元には言葉からは入れないのだ。著者の扱う論理には、経験を世界に拡張せず、その範囲度外の存在を知らせる役割が課せされている。2017/02/17