内容説明
日本演劇界の重鎮・北條秀司。数多の作品を世に送り出し、時に「北條天皇」とも称されたこの劇作家、実は無類の祭り好きでもあった―。「うじ虫祭り」に「オホホ祭り」、「蛙飛び」、「野馬追い」…軽妙な文体で各地の習俗を描き出した名著が、半世紀ぶりに復刊。
目次
三州西尾のテンテコ祭り
南信濃新野の夜田楽
大和五条の鬼走り
松本平の三九郎焼き
秩父隠れ里おんまらさま
明日香の宮のおん田遊び
秋田六郷の竹合戦
牛久保城下のうじ虫祭り
尾張熱田のオホホ祭り
奥近江の大凧揚げ
相模大磯座問答
吉野山の蛙飛び
相馬の原の野馬追い
九十九里浜の鬼来迎
琵琶湖岸の気ちがい祭り
日高川べりの笑い祭り
奥三河のさん侯祭り
美保ヶ関の諸手船
著者等紹介
北條秀司[ホウジョウヒデジ]
1902年、大阪生まれ。関西大学専門部文学科卒業。劇作家。岡本綺堂に師事し、1937年に戯曲『表彰式前後』でデビュー。綺堂没後は長谷川伸に師事し、新国劇をはじめ新派、歌舞伎、舞踊劇などさまざまな分野で作品を発表。代表作に1940年の『閣下』(新潮社文藝賞)、1951年の『霧の音』(毎日演劇賞)などがあるほか、『源氏物語』を題材にしたものも多く、その集大成は「北條源氏」と称された。執筆した脚本は自ら演出することで知られ、その厳しい指導ぶりから「北條天皇」とも呼ばれた。日本演劇協会会長、国際演劇協会日本センター会長などを歴任し、1987年に文化功労者に選出。1996年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
六点
126
劇作家として著名な著者が全国18の奇祭を巡る紀行エッセイである。現在よりずっと交通が不便であった時代にと思いきや、場所によっては現在より便利な場所もあるのだろうなと思う。印象に残るのは、各祭りの見物客も執行者も人数が多かったのだなということ。古くからの旅館が多く営業していたことである。「駅前旅館」と言う言葉など、説明がなければなんのこっちゃら解りもすまい。巻末に現在の奇祭への交通案内があるが、車が無ければどうにもならない所が多いのは、寂しいという他ない無い。2023/05/11
あたびー
43
読み友様の感想を読んで読みたくなっちゃった。1969年刊行の本の復刊。なにしろ有名な劇作家の先生なので鷹揚な大名旅行なのであります。土地の人も知らないようなお祭りも、祭り好き仲間からの情報なのか嗅ぎつけて出かける。どこへ行っても役所からお世話をする人が来るし、何時間もタクシー雇い切りとか、こんな旅行がしてみたい😅巻末には収録されているお祭りの2021年現在のデータが記載されていますが、皆継続されているのがすごい!土地の人達の努力の賜物です。🐸好きとしては吉野山の蛙跳び見てみたいっす!2023/06/19
たまきら
31
1960年代に取材された日本の祭り。多くはどこか因習めいていて、そのままホラー映画になりそうなくらい揺らめきがあり、紀行ものというよりも小説のようだ、と思ったら劇作家さんによるものでした。読みながらちょっと怖かった…。2023/06/05
鯖
19
昭和40年代の奇祭18を集めた紀行。新田義貞の戦死に心が狂って入水した勾当内侍を悼み「城門じゃ火事じゃ火事じゃ」と叫び続ける「琵琶湖岸の気ちがい祭り」平将門の奥方が忠臣と逃げたものの、そういう仲になりかけ蕗の葉を股にあてて、これを破らなきゃ好きにしていいですよって言ったけど破っちゃって、それから辺りの蕗の葉は真ん中に穴があいたものしか生えなくなった「秩父隠れ里おんまらさま」祭りとしては古い木片を焼いて「おんまらさまおんまらさま今年もよろしくおねがいします」って唱えて新しいのと変えるだけ。2022/10/02
qoop
7
村単位の民俗文化がギリギリ残る1960年代日本。各地の〈奇祭〉を訪れその様子を書き残す著者の筆には喜びと興奮が強く感じられる。情報の伝播と移動の高速化の恩恵を受けつつ、変化する生活環境の中で異質に映る習俗を愛おしそうに眺める著者の視点はまさしく時代の境界線上にあったのだろう。……本書とは関係ないが北條というと宝塚関係でも名前を聞くなと思いwikiを開くと「1926年、久松一声の誘いで宝塚歌劇団に入社の話があったが、面接での宝塚幹部の態度が傲慢だと感じ、入社拒否」とあり、ちょっと笑ってしまった。2021/02/17




