内容説明
現代の文楽の女方を代表する蓑助が、芸歴50年を機に、はじめて明かす芸道人生―。そして魅力あふれる芸の話。
目次
第1章 入門(来世もやっぱり;零歳で死ぬはずが;あの人形生きてる;桐竹紋二郎 ほか)
第2章 襲名(紋十郎門下に;旅から旅;一段飛ばしの階段;心の勲章 ほか)
第3章 蓑助の世界(伝統と現代;人形の色気;女方の人形の型;責任と期待と飛翔と ほか)
三代目吉田蓑助関連年譜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
fonfon
15
「私は、来世も、人形遣いになります。」読了後、わぁっと涙があふれ、声をあげて泣いてしまいました。幼少の頃の鮮明な思い出、戦後物資に欠く頃の三和会での巡業のご苦労の数々、「人形遣いになるな!」と言われてたお父様との葛藤のエピソード、そして、圧巻は第3章「簑助の世界」での「情」を遣う、ことの、心理的リアリティを体現させることを開眼なさったことの自己分析。冒頭にある土門拳さんが撮られた入門時の少年の写真からはじまって、読む者の心をぐっと掴む写真群も素晴らしい!こんな名著が品切れになってるなんて残念!2012/07/29
tom
13
人形遣い吉田蓑助の聞き書き。人形遣いの技術は盗むもの。師匠が遣う人形の擦れとか汚れ具合を見て、その技術を想像する。でも、指の長さ、腕の長さは人それぞれだから、マネをしても、できないことはいくらでもある。そして、盗もうとしたところで、自分の技量分しか盗めない。能力を超えたことを教えようとしても、教えきれない。結局のところ、自分の技術があるレベルに達した時に、ようやく盗める。こういうことをしながら50年、すごいレベルに達した人だけど、さらに修行とおっしゃるのだから、ほんとうにすごい世界に住んでいる。2018/03/12
こまったまこ
4
文楽の人形遣いで人間国宝の吉田簑助さんの自伝です。幼い頃から文楽の世界で育ち芸事一筋に生きてきた人の人生に圧倒されました。戦争中の物資の乏しい中でも文楽を続けていく逞しさ、数々の苦労、文楽に対する尽きない愛情と芸術を高めるたゆまぬ努力。来世も人形遣いになるという一途さに心を打たれました。2013/02/21
at@n
1
来世でも人形遣いになりたいという、物心つく前からひたすら芸の道を進まれた箕助さんの自伝。戦前からの文楽座の様子も詳細に描かれ、土門拳の写真にすでに子役時代のお姿が見えることに驚いた。肉弾三勇士の人形代わりに抱えられたとも。戦後の分裂時代に自主興行で楽屋にヒロポンの注射器が転がっている地方の小屋なども回られたことなども興味深い。伝統を繋ぐ一方で時代とともに変わるのが文楽だという、芸の真髄を味わう一助となる素晴らしい本だと思う。2022/01/12
ペンポン
1
箕助師匠も良く書かれたものだ。5~6歳から文楽の世界で小間使いの様な事をしておられたと書いてある。孫の歳でそんなことをしてたのか!余程文楽が好きだった。イヤ文楽しか世界がなかったのだろうなと感じた。本書は絶版であるが、幸いにも区の図書館にあった。やはり一芸に秀でた人はのめりようが凄い。心中物では相手の人形だけで無く遣い手にまで恋心を抱いてしまうそうだ。2021/04/14