内容説明
こんにち個人の未曾有の画一化の時代を生きている私たちには、まだ〈個人〉になにを期待することが可能なのか、個人主義の領分としてなにが残されているか。ルネ・ジラールの模倣的欲望論、スケープゴート理論を軸にして、近現代の本質的問題をその淵源から解き明かす。
目次
序章 ルネ・ジラール―懐古的肖像
第1章 ミメーシスと暴力―ジラール理論=仮説素描
第2章 ロマン主義の神話と小説の真実―夏目漱石『行人』論
第3章 暴力的人間と人間的暴力―深沢七郎の世界
第4章 反時代的な考察―ルネ・ジラールとミラン・クンデラ
第5章 “個人”の行方―二、三のスケッチ風随想
著者等紹介
西永良成[ニシナガヨシナリ]
1944年生。東京大学仏文科卒。同大学大学院人文科学研究科に学んだあと、1969‐72年パリの高等師範学校およびソルボンヌに留学。現在、東京外国語大学教授。ポール・ヴェーヌ『詩におけるルネ・シャール』(法政大学出版局)で第七回日仏翻訳文学賞受賞
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感想・レビュー
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ころこ
46
ジラールの理論的解説書だと思って読みましたが射程が広く、アマゾンを含めてレビューが一つもないのもうなずける、本人にしか分からないような本でした。目当てのところは第1章で、①欲望の模倣理論、②文化の基礎としてのスケープゴート理論、③前二者の理論が福音書によって啓示されているという主張と信念の戦略を論じています。第2章以降で漱石『行人』、深沢七郎『楢山節考』、そして翻訳をしているミラン・クンデラへと議論を伸ばしています。言葉は砕けていますが、人に読ませる文章ではないかなという印象を持ちました。2022/01/05