内容説明
王朝が何度変わろうとも、中国では二十世紀まで「古典中国」と称すべき国のあり方が存続していた。この儒教に基づく国のあり方を決定づけたのは、前漢の簒奪者として悪名高い王莽にほかならない。歴史を動かした改革者にもかかわらず、その徹底した改革ゆえに同時代からも後世からも理解されなかった男の事績をたどり、その影響力の大きさを改めて問い直す。
目次
第1章 王莽出現前夜
第2章 儒学との出会い
第3章 古典中国への提言
第4章 莽新の建国
第5章 『周礼』国家
第6章 理念と現実
終章 古典中国の確立
著者等紹介
渡邉義浩[ワタナベヨシヒロ]
1962年、東京都生まれ。筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科史学専攻修了。大東文化大学文学部中国学科教授。専攻は中国古代史。文学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
7
極めて限定的な時代の専門的な内容であるため、固有名詞は馴染のない人たちが多い。門外漢の評者からすれば、改革者から何が学べるのか、という視点で借りることにした。五銖銭とは、重さ五銖の銅銭(前漢武帝~隋迄 広辞苑 116頁)。王莽台頭の背景には、前漢末の社会不安、貧富の差の拡大(137頁)。末尾の王莽の史的意義は、祭祀が理念的であり、古文学を典拠としているのが成功要因としている(184頁)。改革者といえども、温故知新という気がする。昔の良いものは取り入れながらも、時代を切り拓く勇気に、下々も心動かされるのか。2013/03/18
Stella
1
王莽の伝記より儒教成立史に重きが置かれていた。2013/05/14
非実在の構想
0
王莽が新を周礼に基づいて作り上げた様を解説する。五経など儒教の基礎知識を持たない読者には厳しいものがある。
tokumei17794691
0
・第一印象は「表紙と中身が不一致」。帯を含め、表紙で「王莽は改革者」とさんざん煽っておきながら、9割以上が「儒教思想」だった。・王莽は、預言のヤラセを多用したとはいえ、帝位簒奪前は民衆の支持を得ていて、簒奪後は一気に支持を失い、わずか1代15年で新王朝は滅亡している。そこの記述が、あまりに薄い。直接論じたのは、「王莽の孤独」の節のわずか8ページに過ぎぬ。ここをもっと書いてほしかった。・本来宗教色が薄い、儒教が宗教化・国教化していく過程や、祭祀対象は書かれている。ただ、祭祀の式次第を具体的に書いてほしかった2023/05/01