出版社内容情報
佐野幹[サノミキ]
著・文・その他
内容説明
1956年、「走れメロス」は初めて教科書に現れた。「走れメロス」の原話がたどった歴史をネットワークグラフで解き明かす。
目次
はじめに 「走れメロス」とは何か
第1部 「メロス伝説」のネットワーク
第2部 “明治初・中期”「メロス伝説」のはじまり
第3部 “明治後期・大正期”「メロス伝説」を広げた近代の教育
第4部 “昭和初・中期”「走れメロス」の登場
おわりに 広がり続ける「メロス伝説」のネットワーク
著者等紹介
佐野幹[サノミキ]
1976年、神奈川県生まれ。博士(教育学)。東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科修了。宮城教育大学准教授。岩手県立釜石高等学校、岩手県立一関第二高等学校など、岩手県の高校教諭(国語科)を経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鉄之助
239
『走れメロス』は、太宰の専売特許ではなかった! なんとギリシャやローマ時代から続くヨーロッパの伝説だったのだ。日本でも坪内逍遥、鈴木三重吉などに始まり多種彩々…。その本の表紙がカラーの口絵で紹介されていて非常に興味を持った。さらにその裏には「メロス伝説」の世界的な広がりと時系列に合わせて、一目でわかるグラフが示される。著者の執念と労力に頭が下がった。その中にあって太宰版メロスの凄さが、身に染みてよく分かった。そして、なぜ『走れメロス』が日本中の教科書に掲載されたのか? その謎にも迫る好著だった。2024/02/21
ハナさん*
3
2022年10月1日初版第1刷。県図より。博士論文(教育学)の公刊本。太宰の『メロス』の元ネタ(シラーの詩)のさらなる元ネタが、古代ギリシャのダモンとピュティオスの伝説なのは知っていたが。古代ギリシャ以降、西欧でどのように享受されたか。明治初期に日本に流入してから、どのように再話され、太宰の作品が書かれるに至ったか。そして、太宰の作品が国語教科書に採録されることで、どのように普及していったか。国語教育という視点から、教育学の博士論文にふさわしい労作だが。それ以外の視点からも、興味深いことが多々ある。↓↓2024/02/23
ゆーじ
2
この物語が内包する徳性は長く国民性の根幹を支配してきた。ある時は修身・修養が、ある時は教育勅語,軍人勅諭がこの物語を利用し国民精神に徳性を刷り込んでいった。しかしそれはクローズな徳性であるとこの本を読んで理解できた。古代ギリシャから近代日本へやってきた「メロス伝説」は時代にあわせ変化しながら国民道徳に影響を与え、それと密着し国家を支える思想を形成していったのだった。2025/03/31