内容説明
トウモロコシ、ジャガイモ、カマキリ、バッタ…。生活に身近な語彙や、人名や地名と方言の関係、文法の地域差などを例に、地理空間におけることばの変化のしくみを考察。言語記号の恣意性を超えた有縁化の働き、そして、方言分布の基本則を明らかにし、なぜ方言は存在するのかという謎に迫る。
目次
序章 ことばの変化と場所―方言とは何か?方言はなぜ存在するのか?
第1部 ことばと物と場所と
第2部 ことばのぶつかり合い
第3部 ことばの混ざり合い
第4部 文法の変化と方言の形成
第5部 方言の地理空間
著者等紹介
大西拓一郎[オオニシタクイチロウ]
1963年大阪府生まれ。東北大学文学部卒業、東北大学大学院文学研究科修了、国立国語研究所教授。専門は方言学・言語地理学。2010年より生活拠点を長野県に移し、富山大学・信州大学と共同で富山県や長野県でフィールドワークを行い、生活者・言語使用者の思考・感覚に根ざした方言ならびに方言分布形成の要因・過程の解明に取り組んでいる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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へくとぱすかる
57
「なぜ」地方によって、同じことを違うことばで表現するのか? 方言学をつきつめれば、この疑問につきあたる。ジャガイモの呼称の発生が実に興味深く、思わず手を打ちたくなった。衣服にくっつく草の実にも、こんなに深い事情があったとは! フィールドワークで仮説を検証して、正しい変化の事情が判明するとは、まさに「実験」である。この本は引用文献が幅広く、自然科学の分野にも及んでいて、グラフ化も行い、国語学の最前線をみる思いがする。そして今もなお表現の変化は進行していて、「方言は滅びた」というのはまだ早いこともわかった。2023/10/24
ま
36
後作から読んでしまったが、やはりじゃがいもの項が面白い。こんなに派生があるんだ。文法は共有されにくいが寿命は長い。逆に語彙は共有されやすいが寿命は短い。方言周圏論と区画論のどちらに立つかは、語彙を中心にみるか文法を中心にみるかにもよる。そろそろ本を閉じて、外へ出よう。2024/04/16
tetsubun1000mg
10
「方言はなぜ存在するのか」というタイトルに惹かれて選ぶ。 全国的な方言の分布などを期待していたのだが、とうもろこしとモロコシの関東での分布やじゃがいもと清太夫、コーシューなどの違いと分布などが中心となっていた。 かなり地域で多くの人数で分布を調べた結果のようだった。 大学か大学院の研究論文のための調査だったのかな。 最後の章の「方言の地理空間と視点」では、方言を本州の東部方言、西部方言、九州方言、琉球方言に分けているのが理解しやすく納得。2024/01/06
海星梨
9
ガチなんですよね……。というわけで、言語学部の学生は必読って感じですが、なんでも読む勢としてはハイカロリー。前半は「綺麗に説明できる」例で面白いんだけど、中盤の「モニタリングできるわけじゃないから言語地理学的にも推測になる」から難しくなって、最後の言語学としての提言あたりはなかなか理解が難しい。作物史なんかも広く踏まえて論証を進めていく姿勢が好きな著者さんです。2024/02/11
shrzr
0
興味が尽きない2024/12/22