出版社内容情報
清少納言から村上春樹まで古今の名文を渉猟し、卓抜な引用のセンスと生きの良い解説によりレトリックの醍醐味と効能を縦横に説く。
内容説明
カレーの辛さを表現するのに、「口中はヨウコウロのごとくなり…」などと言えば、大げさなようでも辛さの感覚は効果的に伝わる。このように誇張や喩えを駆使して読み手の想像力を刺激するのがレトリックの力である。そのダイナミズムを究明すべく、清少納言から村上春樹まで、古今の名文を卓抜なセンスで俎上にのせ、そこに見られるレトリックの使われ方を解明。作者の脈動がいかに読者に共振して伝わるか、その不思議に迫る。日本語表現の奥深い豊かさを「発見する」レトリック読本。
目次
第1部 視点の定位(誇張する;喩える;対照する;ほのめかす;ぼかす)
第2部 文体的処置(繰り返す;追加する;省略する;移動する)
第3部 読者への働きかけ(呼びかける;驚かす;引用する)
著者等紹介
野内良三[ノウチリョウゾウ]
1944年東京に生まれる。東京教育大学文学部仏文科卒。同大学院文学研究科博士課程中退。静岡女子大学助教授、高知大学教授を経て、関西外国語大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
すいへい
12
文章のテクニックと効果を分類し、例文とともに解説している。知らず知らずのうちに読んだり、書いていることに名前をつけ、整理してくれる。感覚を言語化してくれてるところでは、へぇとなる2023/04/23
山のトンネル
5
★★★文学作品を通してケーススタディのようにレトリックを学ぶことができる本。〈具体から抽象を得るような構成になっていると感じた。〉扱っている文章が現代文ではないことも多々あるので、文章の解釈力が求められることがまちまち。紹介されている12のテクニックを1つずつ丁寧に仕上げていくことで、より魅力的な文章が書けるようになるだろう。2021/03/01
やま
2
様々なレトリックの手法を例文付きで紹介。少々くどい所もあるが、様々な技法が駆使されていることに圧倒される。例文の内容も著者の書いた部分も面白い。2021/09/03
𓆱
1
読んだあとに一番に感じたのが、良い作品・面白い作品は、漫画であれ小説であれ映画であれお笑いネタであろうとレトリックを駆使している物が多いという気づきだった。今まで意識することもなかったが周りには案外とレトリックが溢れているようだ。紹介されている例文は明治以前のもので、現代語ではない古めかしい日本語が多くてよく分からないこともあるが、分からないのになんだか良い文章だなと感じるものもあり不思議である。レトリックについてもう少し勉強してみよう。2025/03/24
3つ
1
レトリック。その存在を自覚すると、自分が日本語をあまり理解していなかったことに気づく。様々な言辞を何気なく読み飛ばしていたこと、そこに様々な意匠が施されていること、様々なテクニックでこちらに訴えかけてきていること、それらに全く反応を返せずにいたことに。母語はいつの間にかある程度は使えるようになっているので、このことが母語に対する理解の曖昧さに繋がっていると感じる。レトリックを知れば識るほどそのことを痛烈に意識することになる。2024/07/31