内容説明
1995年6月21日正午、羽田発函館行のANA857便が離陸直後にハイジャックされた。犯人はオウム真理教の信者と見られ、毒ガスのサリンを持っていると脅した。函館空港に着陸した857便を占拠するハイジャック犯に、北海道警察はその総力を挙げて対峙する。警視庁の特殊部隊も投入され、事件解決へ向けて、極限まで緊迫する対策チーム。一方その裏側で、事件報道という大役を担うマスコミも試行錯誤をくり返す。ハイジャックされた機内への強行突入という、日本警察史上唯一の事例である本事件は、以後の「危機管理」に重大な示唆を投げかけることとなった。本書は、四半世紀の時を経て、平成の事件史に残る“函館空港ハイジャック事件”の全貌を明らかにする。
目次
事件発生
衝撃
前哨戦
バブル
膠着
携帯電話
SAT初陣
報道自粛
御前会議
最終準備
カウントダウン
著者等紹介
相原秀起[アイハラヒデキ]
1962年、横浜市に生まれる。北海道大学農学部卒。在学中は探検部に所属。1985年、北海道新聞社入社。87年から社会部で警察担当、道警キャップなどを経て函館支社報道部勤務。2016年からは同支社報道部長。現在は道新ぶんぶんクラブ事務局長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みこ
17
一度ドキュメンタリー系バラエティ番組で再現されたこともあって十分鮮明な記憶の残る事件の懇親のルポ。中盤の警察の対応のもどかしさに読んでいて機内で焦燥するパイロットとシンクロしつつも終盤の突入シーンはハリウッド映画を見ているような高揚感だった。これも被害者が居なかったことと、犯人に同情の余地もなければ動機や計画に共感できるものが一切なかったからだろう。以前テレビ音や演出付きで見たものより緊張感を味わえるのは筆者の筆力だろう。2019/10/07
ふたば@気合いは、心を込めて準備中
10
事件の経過は、ニュースで見た。膠着状態が長く続いた後の、最後の突入シーンが印象に強く残っている。しかし、犯人の人物像についてはあまり知らなかった。元銀行員。それだけだった。この本を読むことで、いかにして事件は発生することになったか、がわかった。部下思い、家族思いのエリート銀行員が女性に入れ揚げ、バブル崩壊もあって転落の一途をたどった末の結末。計画はよく考えたようでいて、杜撰。オウムの代表を尋問、すべてを白状させたうえで、道ずれに自殺。民衆の喝采を浴びてヒーローとして終わる…正直考え方が全く理解できない。2019/09/07
あや
2
1995年、地下鉄サリン事件の3ヶ月後に起きた、オウム関係者を騙ったハイジャック事件の記録。SAT投入や報道自粛という概念の先駆けとなった事件でもある。地元で物心もついていたはずなのになぜか少しも記憶に残っていなかったので新鮮だった。驚愕したのは真の動機。こんな理由と稚拙な道具で日本中の警察・マスコミ・行政・交通機関が上へ下への大騒ぎになったことが今となっては信じられない。(この事件後すぐにではなかったようだが)飛行機がより安全に利用できる世の中になってよかったと思う。2021/02/19
みさよ♪
2
この事件の記憶が抜け落ちていたけど、途中からハラハラドキドキ、先が気になって仕方なかった。 警察と報道が人命最優先を掲げながら事件に立ち向かうところに胸が熱くなりました。2019/04/24
ウマカラス
1
テレビの特番を見て、まったく記憶にない事件だなと思い、本を借りてきた。臨場感を出す演出なのか、場面が小刻みに変わる構成だったが、感情移入できない逆効果に感じてしまったのが残念。事件の15時間を中心にまとめているのだが、できれば犯人のその後も知りたいなと思ってたので、そこも物足りなく感じた。とはいえ、成功を教訓にできないってのは残念な文化だなとつくづく感じる。というか15時間も膠着状態が続いてるのに、それが成功事例と言っていいのだろうか?2021/09/27