内容説明
日本軍敗走後の1940年代半ばのビルマ。イギリスによる植民地化に抗い、完全独立という一筋の希望を抱いて闘う農民たち―。アウンサン将軍率いる中央政界や反政府組織の混迷ぶりを浮き彫りにしながら、所属政党の異なる青年男女の恋愛を軸に、政治に翻弄されるデルタ地帯の人間模様を活写する。ビルマ共産党書記長を務めた作家が、1946年を中心に2年間にわたる怒濤のような独立前夜を、痛恨の思いで書き上げた長編。半世紀を経て2013年復刊。
著者等紹介
テインペーミン[テインペーミン] [Thein Pe Myint]
1914‐78。ミャンマー(旧ビルマ)中央部のブダリン市に土地測量事務所書記の次男として生まれる。ヤンゴン(ラングーン)大学在学中に短編を発表し、独立運動、学生運動にも加わる。日本占領期はインドに亡命して抗日活動に従事。帰国後は共産党書記長、離党後に国会議員、作家協会会長、新聞社主筆などを歴任しながら、短編、長編、評論など多数出版。邦訳作品に国民文学賞受賞作『東より日出ずるが如く』(井村文化事業社)ほか。ビルマ式社会主義時代に政府批判の論評で新聞社主筆の座を追われるが、生涯にわたり文学と政治のはざまで戦後ビルマ社会を果敢に牽引し続けた
南田みどり[ミナミダミドリ]
1948年兵庫県生まれ。大阪大学名誉教授。大阪外国語大学外国語研究科南アジア語学専攻修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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コカブ
3
1945年3月27日、ビルマ一斉蜂起によって日本軍はビルマから撤退した。イラワジ川のデルタ地帯にあるピャーポン市周辺の農村では、ビルマ愛国軍(蜂起を行った旧ビルマ国軍)のティンウー中尉が社会党のピャーポン郡議長として運動を取りまとめていた。一方、女性教師のターメーは共産党員だった。ティンウーとターメーは恋人同士だった。まずはイギリス軍の再進駐直後から話が始まる。ティンウーの元には駐屯場所をイギリス軍に明け渡すよう指令が来ていたが、現場では日本軍を追い出した勢いのままにイギリス軍とも戦うという雰囲気だった。2019/05/27
ryoma
0
その時代のその場所の雰囲気を感じるのに、小説って、良いなー、っと。2017/08/31
梅子
0
抗日戦争後、英国圧制下で困窮するビルマ。主人公の女性ターメーは農村出身の共産党員で教師、社会党員の恋人ティンウーがいる。社共は傀儡政権への共同戦線を闘ったものの後に内ゲバ、恋人2人は党派政治の力学に引き裂かれていく。この時のターメーの葛藤がビルマ文学の真骨頂。信頼できる党員と一から立ち上げた共産党への愛、虐げられつつも優しい村民達への愛、同居する家族への愛、そして恋人で政敵のティンウーへの愛。全て手放しがたく、しかし全て手に入れる事はできない若き活動家の葛藤をこれほど美しく描写した作品を私は知らない。2021/01/16