内容説明
若手の画家が集う小さなアトリエ。その中でひと際異彩を放つ一人の画家。彼はあふれでるイメージを「物語」としてキャンバスに描いていく。しかしどの絵も完成させることができず、物語は結末を迎えずに放りだされる。ある日、アトリエに一人の少女が現れる。光を求める二人が出会い、絵は次第に完成に近づいていく。しかしその結末は彼自身も予想しない残酷なものだった…。演劇ユニット『空想組曲』の主宰にして、劇作家・演出家の保坂葉が描く、限りなくピュアなラブストーリー。“物語”の構築力と構成力に定評のある著者、初の小説作品。
著者等紹介
保坂葉[ホサカヨウ]
3月23日京都府生まれ。2006年、演劇プロデュースユニット「空想組曲」を結成。「ほさかよう」のペンネームで作・演出家を務める。“ものがたるものがたり”をキーワードに、ミステリーとファンタジー要素に満ちた作品を上演、物語の構築力、構成の巧みさには定評がある。自らのユニット以外にも、外部に数多くの舞台脚本を提供しているほか、映像脚本、ラジオドラマ、ゲームシナリオなど、多岐に渡る執筆活動を展開している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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橋川桂
6
正直少し苦手な部類の話。あくまで個人的にはだけど、ラストもちょっと腑に落ちないものがのこった。それでも三人の画家たちの確執や苦悩とか、この分量でなかなかの読みごたえ。2018/05/17
ひびき
4
高校生のとき、立ち寄った本屋でこの本を見つけて、表紙に一目惚れしたのを今でも憶えてる。でもそのときは本を買わなくて、ふとこの本の表紙を思い出して読みたくなって、探し回ったのが懐かしい。ほさかようさんの作品は重いテーマが多いけど、なぜかあたたかい気持ちになるんだよなあ。小説もいいけど、やっぱり舞台で観たい!と思う。2017/09/29
ちぃ@お茶当番見習い
1
私も、「どうせ私なんか」を、抱えている人間なので名村の気持ちがすっと入ってくるような気がしてしまった。桜坂のように、人を傷つけてることにも気付かない、無神経さという強かさを持ち合わせられたなら、もっと器用に生きられたのかもしれない。闇は濃いほど、そのなかに微かに見える光が際立つものなのかもしれない。光のあるところに影はないし、影しかないところに光はない。綺麗な物語でした。劇場で見てみたいです。(ちなみに、この本は「ドロシーの帰還」上演中に購入、昨年上演された組曲「遭遇」のモチーフになっていました)2017/04/13
ハルト
1
心に闇を抱えた画家と、まるですべてを見透かすかのように、彼の絵、心をほどき、するりと入り込んでくる少女。ふたりともが抱える「闇」。だからこそ、互いの存在だけが「光」となる。繊細で悲しいでも救いのあるラブストーリーでした。ミステリアスな朽葉さんがいいなあと思っていたら、まさかあんなふうにオチに使われるとは…。あのオチも、まあありかなとは思うので、綺麗にまとまっていたかなと思うけれども、彼らの心の闇にせまるようなえぐさだったり、切実さだったりが少し足りず、心を揺さぶるまでにはいかなかったのが残念。→2010/09/05
オハナ☆
0
テーマは重いし、全体的なトーン暗かった。いや、むしろ真っ黒。闇があるから光がある、ということを伝えたかったのかな?ラストに仄かな光が見えたのが、一つの救い。2016/02/11