出版社内容情報
地質学者でもある著者が、古代史から消えた楼蘭国と砂漠に消えては現れる『彷徨える湖ロプ・ノール』の謎に迫るロマンの作。
著者自らの探訪、古代史、地質学を交え、カラー写真、地図を利用し、学術的でありながらも、著者の人間味があふれ、謎を解く為にまとめた力作です。
楼蘭の旅 楼蘭再訪の旅 ミーラン素描 ニヤ遺跡探訪 楼蘭国と善国 楼蘭および周辺の探検史 シルクロード陥没帯とロプ・ノールの古地理 ロプ・ノールの謎を追う 楼蘭へのロマン
はじめに 夢の楼蘭王国
さまよえる湖のロプ・ノール、楼蘭といえば、若い頃から夢にまで見た憧憬の地である。匈奴と漢の板ばさみになった楼蘭王国、漢王朝によって国名を善国に変えさせられた楼蘭国、古代史から消え去った楼蘭、砂塵に吹きあらされ砂に埋まる廃の楼蘭、ヘディンの発見により歴史に再登場する楼蘭。そのどれをとってもそこに限りなくロマンを感じる。しかし、いくら夢をもっていたとしても、私の近い過去、いわんや若い頃の時代には行けるようなところではなかった。
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第1章、第2章は最初の楼蘭訪問と楼蘭再訪の旅をまとめたが、関係する歴史や探検を混じえて述べた。第3章ではミーランの遺跡について述べている。ミーランへは1996年の西域南道完全走破のときを合わせて3回訪れている。旅のことは「シルクロード探遊」で述べていること、またミーラン前後の旅は直接遺跡と関係が少ないことから省略した。第4章はニヤ遺跡の旅についてまとめた。
楼蘭国が歴史に登場し、善国となり、さらに歴史から消え去ってしまうことは、一つのドラマ的なノンフィクションである。楼蘭を訪ねるにあたって歴史は無視できない。そこで第5章に歴史的観点から「楼蘭国と善国」として述べた。
古代史における楼蘭の最初は、紀元前176年の匈奴冒頓単于の使書とされるが、それ以後の楼蘭は古代の探検の結果として記録されている。シルクロードが開かれたのも、紀元前139年から126年、大月氏国への使者張騫が漢に帰国してからだといわれるが、当時の大探検である。近代になって楼蘭が発見され歴史に再登場するのも、ヘディンの探検があったればこそである。ミーラン、ニヤの遺跡にしてもスタインの探検により明らかにされたわけである。そうなると、楼蘭を語るに探検は避けてとおれない。そこで第6章を楼蘭探検史としてまとめた。
楼蘭の滅亡は、コンチェ・ダリヤの水流がなくなり、ロープ・ノールの水が涸れたことが最大の要因であろう。またその湖がヘディンによる「彷徨える湖」だという。水量の変遷、自然の変化はどうなっているのか? それを解明するため、第7章にシルクロード陥没帯とロプ・ノール古地埋について、私の考察とともに大局的に説明した。第8章にロプ・ノールの謎を追う、を設けた。この章ではロプ・ノール論争、彷徨える湖説とそれへの批判、それに対しての私の考え、さらにはロプ・ノールの水の変遷についての総括的な検討などを述べている。
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地質学者の著者が、古代史から消えた楼蘭国と砂漠に消えては現れる『彷徨える湖ロプ・ノール』の謎に迫る!
著者自らの探訪、古代史、地質学を交え、カラー写真、地図を利用し、学術的でありながらも、著者の人間味があふれ、謎を解く為にまとめた力作です。
目次
第1章 楼蘭の旅
第2章 楼蘭再訪の旅
第3章 ミーラン素描
第4章 ニヤ遺跡探訪
第5章 楼蘭国と〓(ぜん)善国
第6章 楼蘭および周辺の探検史
第7章 シルクロード陥没帯とロプ・ノール古地理
第8章 ロプ・ノールの謎
著者等紹介
松本征夫[マツモトユキオ]
昭和4年福岡県北九州市戸畑区生まれ。昭和27年九州大学理学部地質学科卒業、同大学、長崎大学、山口大学を経て平成4年定年退官。山口大学名誉教授。理学博士。昭和20年から登山を始め、しんつくし山岳会、日本ヒマラヤ協会、日本山岳会、日本山岳文化学会、九州シルクロード協会などに所属。日本山岳会福岡支部長、日本高山植物保護協会評議員などを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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