内容説明
写真、絵画、報道、広告…さまざまなメディアにおいて、ほとんど何も判別できないような画像が、なぜポピュラーになり得たのだろうか?不鮮明なイメージの出現とその流行を時代背景から考察する。2003年度シュトゥットガルト写真関連著作賞受賞作。
目次
ロマン派の遠くを見つめるまなざし
写真にもたらされた福音
アウラ・霊媒・オカルティズム
“芸術”の生産―ジャンルの融合
例外的状態の美学
知覚にとって何が真理か
内的イメージの探求
運動の形而上学
信憑性
画像による画像の省察
複数形で
良い生活のイコノロジー
著者等紹介
ウルリヒ,ヴォルフガング[ウルリヒ,ヴォルフガング][Ullrich,Wolfgang]
1967年、ミュンヘン生まれ。同地で哲学、美術史、ドイツ文学等を学ぶ。1994年以降、作家として活動。大学でも教鞭をとるかたわら、企業アドヴァイザーとして、イメージ・ブランド戦略の研究に携わる。ミュンヘン造形芸術アカデミー、ハンブルク造形芸術大学を経て、現在はカールスルーエ造形大学客員教授。『不鮮明の歴史』で、2003年度シュトゥットガルト写真関連著作賞を受賞
満留伸一郎[ミツドメシンイチロウ]
1973年、鹿児島県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程在籍(専攻=ドイツ文学)。東京藝術大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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gorgeanalogue
11
「にじみ」の存在論みたいな内容を期待していたが、むしろテクノロジーとの関係で更新される美学が問題にされている。したがって重要なのは写真であるが、意外なことにベンヤミンとバルトはほぼ言及されない。ロマンティックな憧憬としての不鮮明は、消費社会においてブルジョワジーの現状肯定のサインに変質してしまう。それは「何かの写しであること」の拒否、「排除のテクニック」でもある。これを記号表現一般(音楽と文学)に適用したら、面白いのかもしれない。曰く「曖昧さの歴史」。それにしても組版ひどい。2025/01/21
ほろぞあ
1
ブレボケじゃんと思って手に取ってみたけど、直接森山中平的な話は出てこなかった。ロマン派以降の風景画から、ピクトリアリズム、アヴァンギャルド、報道、ロモグラフィー、広告まで、アレやブレやボケの効果が、何を意図してどう使われていたのかという歴史。「アレブレボケ」というと反写真と思ってしまうけれど、写真の初期(以前)から、そうした不鮮明の表現は形を変えて用いられていたっぽい。2018/01/15