内容説明
わたくしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、きれいにすきとおった風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、いちばんすばらしいびろうどや羅紗や、宝石いりのきものに、かわっているのをたびたび見ました。わたくしは、そういうきれいなたべものや、きものをすきです。これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹や月あかりからもらってきたのです。けれども、わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません。
著者等紹介
宮沢賢治[ミヤザワケンジ]
明治29年(1896)~昭和8年(1933)。詩人・童話作家・教育者・農芸化学者・宗教者として、全生涯を貧しい東北農民たちのしあわせのために力ををつくした
高田勲[タカダイサオ]
1938年、島根県生まれ。日本美術家連盟会員
小西正保[コニシマサヤス]
1930年、東京生まれ。長く児童書の編集者を勤める。かたわら児童文学評論を執筆。日本児童文学者協会々員
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感想・レビュー
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こかげ
8
虔十は『雨ニモマケズ』の主人公のような人です。 自然が大好きなのです。 杉の苗を家の裏の野原に700本植えましたが、土の下が硬い粘土だったため、2.7mほどしか伸びません。それでも虔十は杉の枝打ちをすると、そこは子供達の大のお気に入りの遊び場になります。虔十の喜んだことといったらありません。 虔十は若くして亡くなってしまいますが、虔十の林はいつまでもそのまま残り、子供たちも遊び続け、いつか『虔十公園林』という立派な碑が立ったのでした。 虔十は、まるで天使のような人です。2023/03/02
キーにゃん@絶対ガラケー主義宣言
5
ソウイウモノニナリタカッタ。ソウイウ親ニナリタカッタ。2021/05/10
ビシャカナ
0
頭が足りない虔十が何を思ったのか育てた杉林、何十年もして虔十が亡くなっても都市開発が進んでも残った杉林は、自然を伝える尊い存在となり公園として顕彰された。頭が足りない虔十を、そういうものだと受け入れるおおらかな家族や村人たちがあたたかくそうありたい、言いがかりをつける平二のようになってはいけないと心がけたい。朴訥とした表情豊かな味わい深い絵柄もいい。2022/03/31
nago
0
この絵は割としっくりきて、自分としては話のイメージに合うほうです。最後に小西さんの解説つき。2021/02/19