内容説明
幸せに暮らしていた二人―ところが、ある日妻が突然若返りはじめ、静かにゆっくりと哀しい結末へといたる…「Separation―きみが還る場所」。恋人の心の声が聞こえるようになってしまった青年の苦悩と喪失の物語…「VOICE」。切なく哀しい2編の恋愛物語。
目次
Separation―きみが還る場所
VOICE
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あおでん@やさどく管理人
20
【再読】かなり久しぶりに市川さんの出版デビュー作を再読。根っこの部分は近年の作品に至るまで変わっていないのは間違いないが、全く同じではない「何か」も感じられる。多くの人とのつながりを望まず、小さな閉じた世界の中。ただ一人を深く愛する気持ちと、それと同じくらいの「こんな自分に付き合わせていいのだろうか」と相手を遠ざけようとする気持ち。市川さんの作品で繰り返し登場するこの2つの気持ちが、最も切実に描かれている2作と言えるかもしれない。2022/02/09
チアモン
10
とてもピュアで切ない物語。私だったらこの現実を全て受け止められるかな。市川先生の優しさがひしひしと伝わってくる作品でした。2013/09/08
よしみん
7
旧名「きみはぼくの」と、「VOICE」が入った一冊。市川さんが奥様の為だけに書いた作品。「きみはぼくの」は幸せに結ばれた二人を襲う若年化していく妻との幸せで哀しい日々を「VOICE」では彼女の心の叫びを聞きながら自分の病ゆえに結ばれなかった二人の哀しい恋を、同じ名前の主人公達で描かれている。溢れる優しい愛。それでも乗り越えるには苦しすぎる壁。静かで、誠実な言葉が胸の奥で響く。私達は自分の未来を自分で選んでいく。選んだ先の未来が正解かどうか解らないが、揺るがない愛と生と死が静かにそこに存在するのを感じた。2012/01/19
つねちゃん
5
「きみはぼくの」と「VOICE」の姉妹小説、どちらも悟と裕子の物語なんやけど、全然違うストーリー。でも、両方切なかなしい。「きみはぼくの」がもう最後のシーンが涙が溢れてきて、止まんなかった。不思議な話やけど、あんな深い愛情で結ばれた2人がすごくもあり、逆に怖いくらいやった。いかにも市川さんらしい話やと思いました。2016/07/09
fermata
5
市川拓司さんの作品を読むのは2作目。1作目は「そのときは彼によろしく」という作品でした。市川さんの作品を読むといつも改めて人と人の繋がりについて考えさせられます。誰かと心の深い所で繋がるということの喜びや幸せ、そしてそれを失った時の悲しみが作品の中から私の中に流れ込んできました。SeparationとVOICEの2作品とも深い愛をテーマにした作品だと感じました。 心に残った言葉 p.144 「何だか今の人たちは誰かと繋がろう、繋がろうって必死になってるみたいに見えるの。」2016/02/07