内容説明
マサチューセッツ工科大学における講義録をもとにして、著者メルローズが自ら書き下ろした体系的解説書“The Atiyah‐Patodi‐Singer Index Theorem”の日本語版である。本書で著者は、大域解析学の代表的定理である「境界のない多様体」の指数定理を模範として、「境界つき多様体」の指数定理の基礎概念の準備から始めている。そして定理の定式化、証明、応用までを、解析学の視点から詳述している。著者が創始した本書の基本概念である「b幾何」「b計算法」のbとは、境界(boundary)のこと。本書を通じて著者は、境界つきコンパクト多様体の基本結果であるAtiyah‐Patodi‐Singerの指数定理を、境界で退化するディラック作用素で明快に定式化し、証明の骨組みを述べ、b幾何と擬微分作用素のb計算法で肉付けている。定理の証明を軸にして、爆発操作による漸近解析の単純化、境界つき多様体の上の熱核の方法、リスケーリングなど、洗練された技術と考察に富み、幾何への応用など多様な話題が展開されている。
目次
序章 APS定理と証明のあらすじ
第1章 常微分作用素
第2章 完全b幾何
第3章 スピン構造
第4章 略式b計算法
第5章 本式b計算法
第6章 相対指数、コホモロジーおよびレゾルベント
第7章 熱計算法
第8章 局所指数定理
第9章 証明の再論と応用
著者等紹介
メルローズ,R.B.[メルローズ,R.B.][Melrose,Richard B.]
1949年、オーストラリアに生まれる。オーストラリアで学び、英国ケンブリッジ大学で学位取得。マサチューセッツ工科大学数学科教授。1990年京都で開かれた国際数学者会議にて全体講演
内山康一[ウチヤマコウイチ]
東京大学大学院修士課程修了(数学専門課程)、ニース大学にて理学博士(Dr d’Univ.)、東京大学より博士(数理科学)取得。上智大学理工学部数学科教授。専門は微分方程式の漸近解析
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