出版社内容情報
《内容》 細胞増殖は発生現象のなかで根元的なもののひとつである.発生においては,まず体細胞分裂と減数分裂をへて半数体細胞である卵や精子が形成されるが,ついで生じる1個の受精卵が多細胞体となるためには,もちろん細胞の増殖が必要となる.しかし,単なる細胞増殖では細胞の塊をつくるだけであろう.さまざまな細胞種をもち,複雑な形態とある一定の大きさをもつ組織をつくり,さらにその集合体として,これもまたある一定の大きさとバランスを兼ね備えた個体を形成しなければならない.そのためには,細胞の数,細胞の大きさや染色体の分配など,細胞の増殖が時空間的に厳密に制御される必要がある.細胞増殖の制御は,細胞の分化や細胞死,増殖停止の維持(その破綻は形態異常やがんをひき起こす),さらには,老化などと密接に関連している.これらのことから,発生過程での細胞増殖の研究は,発生にかかわる広い分野の理解のみならず,細胞周期そのものや発がん,老化の理解にも大きく貢献するだろう.そして,最近めざましい発生の分子機構や細胞周期の調節機構などの研究の発展とあわせ,発生過程での細胞増殖制御機構の理解も著しく深まってきた.
しかし,細胞増殖を扱った解説書や発生生物学の解説書は数多くあるものの,発生における細胞増殖の研究に注目した書籍はきわめて少ない.そこで本書では,この分野にかかわるわが国の第一人者の執筆により,これら研究の背景と最先端の動向を,さまざまな発生時期,組織,現象の観点から概説した.本書はいわば,発生生物学の視点から眺めた細胞増殖研究,または,細胞増殖の視点から眺めた発生研究の集大成といえる.
細胞増殖と発生の接点の解明をめざす研究における最近の知見を紹介する待望のレビュー集.発生あるいは細胞周期の研究者だけでなく,遺伝子発現制御やシグナル伝達の研究者,また,がんの研究者もみな必読.
《目次》
I.イントロダクション
1.発生過程における細胞増殖の制御
2.細胞周期の制御
II.発生の時空間における増殖制御
1.生殖細胞の形成から初期胚発生に至る増殖制御
1.1.ショウジョウバエ生殖細胞形成過程におけるNanosの機能
1.2.精細胞の増殖制御と精子形成
1.3.動物卵における減数分裂のチェックポイント
1.4.初期胚発生における細胞周期・増殖の制御
1.5.クロマチン制御と増殖
2.組織形成における増殖制御
2.1.骨格筋の分化と細胞増殖
2.2.造血幹細胞分化と増殖制御
2.3.神経系における細胞増殖・分化の制御
2.4.血管形成と増殖制御
2.5.心臓形態形成と増殖制御
2.6.心筋の増殖停止機構
III.発生と増殖研究の接点
1.細胞・個体の大きさの制御
1.1.ショウジョウバエにおける個体成長の制御機構
1.2.線虫の個体と細胞の大きさの制御
1.3.マウスの大きさの制御
2.ES細胞における細胞周期制御の特殊性
3.発生と細胞死
4.非対称分裂のメカニズム
5.老化と細胞増殖制御
6.がん抑制遺伝子と発生
7.増殖関連遺伝子の制御機構
内容説明
多細胞生物の発生には厳密に制御された細胞増殖が必須だ。1個の受精卵が多くの細胞からなる個体になるためには、細胞の増殖が時空間的に厳密に制御される必要がある。さまざまな時期、組織、現象における細胞増殖はいかに制御されているのか、発生と細胞増殖との接点の解明をめざす待望のレビュー集。
目次
1 イントロダクション(発生過程における細胞増殖の制御;細胞周期の制御)
2 発生の時空間における増殖制御(生殖細胞の形成から初期胚発生に至る増殖制御;組織形成における増殖制御)
3 発生と増殖研究の接点(細胞・個体の大きさの制御;ES細胞における細胞周期制御の特殊性;発生と細胞死 ほか)
著者等紹介
竹内隆[タケウチタカシ]
三菱化学生命科学研究所
岸本健雄[キシモトタケオ]
東京工業大学大学院生命理工学研究科
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