内容説明
乱獲や資源悪化の問題を克服するため科学に基づく政策を導入してきた水産先進各国の事例と、明治時代から脱却できない日本の漁業制度の現状。著者が各国の現場を実際に訪れて調査し取り纏めた、今後の政策立案や学術的研究、漁業経営のために必須の一冊。
目次
世界と日本の漁業と資源の概要
1 主要各国の資源管理政策と現状(アイスランドの漁業管理:世界の模範となるITQ方式;ノルウェーの漁業管理:IVQ(個別漁船割当)方式
アメリカ合衆国の漁業管理:IFQ(個別漁業割当)方式
オーストラリアの漁業管理:自立を果たした先進事例
ニュージーランドの漁業管理:成熟したITQ方式と課題
韓国の漁業管理:TAC制度/IQ方式を採用
オランダ:水産政策とその事情)
2 国際的に管理される漁業(中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC))
3 日本の漁業と漁業管理(漁業法と漁業権;漁業と漁業管理の歴史;日本の新しい漁獲管理制度の検討;考察)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こぺたろう
5
世界の漁業管理、特にIQ、ITQ制度の導入状況について書かれた本。主要各国における漁業の流れは、大幅な減船とそれに伴う寡占化が進んでいるとわかった。他方で、日本の漁業制度の章では、不適切な記述が散見(沿岸漁業は許可漁業になっている、等)。まあ、あと書きで、表現の曖昧さについては謝られていますが。とはいうものの、新潟県の先進事例や、中西部太平洋のカツオマグロ資源の状況等も紹介されていて、関係者は必読の書だと思います。大変ためになりました。2018/04/28
cochou
1
アイスランド、ノルウェー、USA、豪州、ニュージーランド、韓国、オランダと国別の漁獲管理を概観。国際管理される漁業として中西部太平洋まぐろ、サメ、ナウル協定。日本は科学的根拠でなく政治力学で決まり、科学者やNGOの影は薄い。「そもそも水産庁には漁業経営を客観的に分析するデータはないし、専門の経営学者・経済学者もいない。しかし、「漁業の経営」を根拠として科学に基づかない恣意的な判断がなされている。」静岡サクラエビ、秋田ハタハタも自主的取組で資源管理の効果は限界ありとする。2021/08/27