感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てれまこし
6
理論構築を終えたクローチェは、その応用として歴史四部作を書いた。そのうちの一つである本書は、十九世紀のヨーロッパ史を自由の歴史、即ち精神が幾多の困難を乗り越えながら発展する歴史として物語る。ヘーゲルと異なるのは、あらかじめ定められた理念に歴史的事実をはめこむのでなくて、事実の中から歴史を背後で動かしている理念を解釈学的に取り出してくる。そして、一見散文的で偉大さの欠けるようなイタリア統一後の政治こそが自由の黄金期として称揚される。そうやって、実現した自由主義社会の幻滅が生んだ進歩への懐疑と反動に対抗する。2022/09/03