内容説明
西洋以外で唯一、自国の楽器だけで西洋の交響曲を演奏できるほどに豊富な楽器を誇る中国。甲骨文字の時代から支配層の文化伝承手段であった文字は、漢字文化圏すべてに二千年を越える拒響を及ぼしてきたが、しかし一方で、文字文化よりもさらに長い歴史と、はるかに多数の民衆という享受者をかかえ、口伝心授で伝承されてきたのが中国の非文字文化なのである。著者は、文献資料や楽譜の渉猟とともに出土楽器の目睹、中国各地における芸能鑑賞や楽器演奏の習得という長年の蓄積をもとに、太古より現代にいたる中国の聴覚非文字文化を読み解く。彼らの探究の軌跡をたどるという独自の視点と具体的事物に即した論述は、読者に豊饒な中国芸能文化の深部に対する明確な輪郭を与えよう。京劇はじめ演劇や語り物などの伝統芸能と有機的関係をもつ音楽は、芸能研究の基礎的素養であり、すなわち文字圏外で創造と継承をくり返す民衆文化を知る重要な手がかりであって、本書の出現により今後、わが国の中国理解はさらなる境地へと展開されるにちがいない。広く、国の文化政策や伝統文化振興を考える上でも示唆に富む、新しく魅力に満ちた必読書。
目次
第1章 楽論
第2章 楽器
第3章 記譜法
第4章 胡楽の受容
第5章 儀礼の音楽
第6章 琴楽
第7章 説唱音楽
第8章 劇楽
著者等紹介
吉川良和[キッカワヨシカズ]
1943年大阪府堺市生れ、東京都立大学博士課程途中退学。香港新亜研究所留学(1972~74)。神奈川大学教授。パリ国立東洋言語文化研究所にて海外研修(1997~98)。現職、一橋大学社会学研究科教授
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Hiroko
水紗枝荒葉