出版社内容情報
怪異研究の権威、西山克氏が「怪異は情報にすぎない。」と書いてから20年が過ぎた。その間、多くの怪異「情報」研究が生み出されたが、果たしてそれらは怪異が「情報」であるということにどこまで自覚的であったのか? 本書は、髪切り・一目連・石塔磨き・雀合戦・流行正月などの記録を新たに博捜し紹介・解読しながら、主に近現代の歴史社会学の分野で隆盛のメディア史的手法を用いて、近世怪異の新たな相貌を描く野心的研究。
内容説明
意外とモダンな、近世の怪異現象。髪切り・一目連・石塔磨き・雀合戦・流行正月などの記録を博捜し解読する、メディア史的手法の新たな境地。
目次
序章 メディア論としての「怪異」研究
第1章 「髪切り」―近世メディアがつくる怪異
第2章 「一目連」―情報の連鎖と拡大
第3章 「石塔磨き」の怪―近世都市の怪異とメディア
第4章 「雀合戦」―書状というメディア
第5章 「流行正月」―疫病の噂とコミュニケーション
終章 メディアと怪異からみる近世社会
著者等紹介
村上紀夫[ムラカミノリオ]
1970年愛媛県今治市生まれ。大谷大学大学院文学研究科博士後期課程中退、博士(文学・奈良大学)。現在、奈良大学文学部史学科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ワッピー
39
いつもの悪いクセで、妖怪そのものよりもその背景や現象を知りたいということで手に取りました。江戸時代に噂になり記録された「髪切り」「一目連」「石塔磨き」「雀合戦」「流行正月」を例に取り上げ、怪異を情報としてとらえ、地域や時代においてどのように広がったのかを検証する。神社仏閣の記録、書物に載ることによって時代を超えて語られた例、逆に口コミで始まったものは次第に形を変えて成長していく。特にそのテーマがどのように記録されたかを出典や時代も含め一覧で見えるのもうれしい。メディア論として非常に楽しく読了しました。 ⇒2023/09/27
佐倉
16
瓦版や噂話など情報を短期間で消費するフロー型メディアと漢籍などを論拠にした知識人の随筆、日記、百科事典などの著作によるストック型メディアのふたつの方向から近世の怪異の様相を探る。妖怪“髪切”の正体についての捉え方の違い、風雨を表す方言だった一目連が神や龍、妖怪へ結びつけられる流れ、江戸時代に墓磨きの妖怪や雀合戦、流行正月に纏わる言説が広まっていく過程など、近世怪異がメディアの中でどのように広まったり変質したりしたかという話が中心で非常に興味深く勉強になった。2023/12/11
さとうしん
15
怪異や妖怪そのものではなくそれらの語られ方、また書物や噂話、瓦版などそれらの情報を伝えるメディアの特性に注目した書。民衆には噂話や瓦版といった形で情報が伝わる一方、知識人が漢籍によって考証を行ったり、「雀合戦」での事例のように知識人が考証によって合理的な解釈を提示してもそれを否定するような言説も出たり、「流行正月」のように個人での抵抗が難しくても集落全体での申し合わせによって行わないことになったり、そうしたいとなみのあり方が面白い。2025/04/19
T. Tokunaga
6
一見オカルト的に見えるものが、いかに近世日本においては「隠れて」おらず、百科事典から瓦版、私信にいたる文字資料によって整理され、客観的に楽しまれ、また怯えられていたかの研究である。シェイクスピアの頃のイギリスと同じで、一通りの教養のある中間層(シェイクスピア自身も不動産取引などしている)が言説の担い手となり、噂話に何気なくコメントしているのを総体として捉えたとき、怪異や妖怪が姿をあらわすという状況は、まさに公共圏の創出である。2025/03/27
onepei
1
形を変えていく妖怪がおもしろい2023/11/11
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