出版社内容情報
私たちのDNAには、ほんの少し、ネアンデルタール人に由来する部分が混じっている。ネアンデルタール人が絶滅して4万年が経つが、私たちの中に彼らの遺伝子が受け継がれているということは、ネアンデルタール人が完全に消え去ったわけではないということだ。2010年に初めてネアンデルタール人のゲノムが発表されて以来、ネアンデルタール人についての、そして彼らと私たちの関係についての理解は劇的に変化した。かつてはネアンデルタール人は単純で残忍だという固定観念があったが、考古学者と分子生物学者による近年の新事実の発見によって、従来とは異なる、より私たちの身近に感じられる「像」が描かれるようになった。ネアンデルタール人は死者を埋葬し、病人の世話をし、洞窟の壁に顔料でペイントまでしていた。今や私たちは、DNAの研究を通じて彼らのヨーロッパでの進化やアジアでの移動の様子を追跡し、断片的な情報をつなぎあわせて、彼らがどのように生き、どのように死んでいったかを驚くほど詳細に推測できる。
本書には、魅力あふれる「私たちホモ・サピエンスの親戚」に関する最先端の研究が紹介されている。たとえば、現生人類や最近になって発見されたデニソワ人との交雑について、彼らの社会的行動について、そして私たち自身の健康にも影響を及ぼしている可能性のある彼らから受け継いだ遺伝子について、などだ。私たちとネアンデルタール人の相違点と類似点を直視することで、本書は「ヒトであるとはどういうことか」という人類最大の疑問に取り組んでいるのである。
【目次】
第1章 過小評価されてきたネアンデルタール人
第2章 最初のヨーロッパ人 100万年前~60万年前
第3章 寒さに打ち勝った人々 60万年前~25万年前
第4章 ネアンデルタール人の登場 25万年前~13万年前
第5章 孤立の終わり 13万年前~6万年前
第6章 ネアンデルタール人、終末へ向かう 6万年前~2万5000年前
第7章 今も私たちとともに?
内容説明
タイトルに「ネアンデルタール人」を含む本のほとんどは、ネアンデルタール人を歴史の中に正当に位置付けることなく、単に特徴を羅列し、主要な遺跡をリストにまとめ、それから本題である「彼らに取って代わった種」について語り始めているように思える。私たちは、ネアンデルタール人の本を書きたいと考えた。長い研究の歴史で付与された誤った役回りに囚われることなく、ホモ・サピエンスの登場によってもそう簡単に視点がぶれることのない本、簡単に言えば、ネアンデルタール人そのものについてのみ記された本を構想したのである。(著者による本書「序」より)
目次
第1章 ネアンデルタール人は、長い間過小評価されてきた
第2章 最初のヨーロッパ人 100万年前~60万年前
第3章 寒さに打ち勝った人々 60万年前~25万年前
第4章 ネアンデルタール人の登場 25万年前~13万年前
第5章 孤立の終わり 13万年前~6万年前
第6章 ネアンデルタール人、終末へ向かう 6万年前~2万5000年前
第7章 今も私たちとともに?
著者等紹介
パパギアーニ,ディミトラ[パパギアーニ,ディミトラ] [Papagianni,Dimitra]
ケンブリッジ大学で旧石器時代と石器を専門に学び、ギリシャ北西部のネアンデルタール人遺跡に関する研究で博士号を取得。南東ヨーロッパ全域でネアンデルタール人の行動や、現生人類の出現とネアンデルタール人の消滅の問題を研究した。サウサンプトン、ケンブリッジ、オックスフォード、バースの学部、修士課程、継続教育課程で教鞭をとる。一般コースを教えているとき、学生からネアンデルタール人の栄枯盛衰を概観できる、最新でわかりやすい本を紹介してほしいと頼まれ、夫のマイケル・A・モースとともに本書を執筆。本書はアメリカ考古学会図書賞を受賞し、入門書の定番となっている(現在、第3版)
モース,マイケル・A.[モース,マイケルA.] [Morse,Michael A.]
科学史の博士号を持ち、英国の考古学史を専門とする。オックスフォード大学で科学と高等教育のプログラムの開発に携わり、2015年、ウィンストン・チャーチル財団のエグゼクティブ・ディレクターに就任
篠田謙一[シノダケンイチ]
分子人類学者、国立科学博物館長。京都大学理学部卒業。博士(医学)。産業医科大学助手、佐賀医科大学助教授を経て、国立科学博物館人類研究部勤務。2021年より同館の館長を務める。古人骨に残るDNAを分析し、日本人の起源や、古代アンデス文明を築いた集団の由来を研究している。科博で多くの特別展、企画展を手がけた
武井摩利[タケイマリ]
翻訳家。東京大学教養学部教養学科卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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