出版社内容情報
グーグルマップをはじめとするデジタル地図と、GPS機能を持つカーナビやスマートフォンの普及によって、人と地図との関わり方は大きく変わった。現在地や目的地の場所を確認することはもちろん、ウェブ上でマップを自由に編集・共有したり、写真に埋め込まれた位置情報から撮影場所を特定するなど、地図の持つ可能性はますます広がりをみせている。しかし一方で、媒体が変わっても「ここはどこ?」を知るために地図を使うことじたいは、人類が集落の配置を岩絵に描いていた頃からそれほど変わっていないとも言える。
デジタル化によって、地図と人間との関わり方はどう変わり、何が変わらなかったのか。
紙からデジタルへと進展していく技術的背景をふまえつつ、人間が空間を把握する力――「空間認知」を軸に捉え直すことを試みる、新しい地図読み物。
<おもな内容>
第1部 地図の今昔
第1部では、岩に描かれた線刻画に始まり、地図がさまざまに進化を遂げてきたようすを例を挙げながら見ていく。
とくに20世紀終盤、デジタル化が始まってからは、地図の概念や利用方法は驚くべき変化を遂げた。一方、地図を使う人間と社会との関わりを考えると、「なにがどこにあるか」を表現する地図の根本的な役割はいつの時代にも同じである。
しかしそもそも広く一般の人が地図を利用できるようになったのは比較的最近のことで、それ以前は地図が人々の世界観に与えた影響は以外に小さかったといえる。したがって誰もが地図にアクセスできる現代には、地図が人々の世界像を大きく変える可能性がある。
第2部 地図を通して知る世界
第2部では、世界像を形作る基礎である人間の空間認知に焦点を当てる。
人間の空間認知能力は、生まれつき備わっている面もあるが、それぞれの時代や地域で流通している地図の影響を受けるため、社会的・文化的環境の作用も無視できない。五感で把握できない広い世界を知るために、人間は地図を発明したのである。
空間的能力は生まれつきのものなのか、環境による要因が大きいのか、あるいは男女に差があるのかについてはこれまでさまざまな調査が試みられている。また神経生理学的研究などによって、空間認知の仕組みも徐々に明らかにされつつある。こうした能力による空間的思考は、地図を用いることによって、感染症対策や防災、犯罪抑止などの社会的問題の解決に具体的に役立てられている。
第3部 地理空間情報と人間
デジタル化によってさまざまな地図表現が可能になり、またユーザー自身が自由に地図を編集できる時代において、このような変化は人間の空間認知にどのような影響を与えているのだろうか。また、今後も地図はさまざまに進化してゆくに違いないが、技術が人間の空間認知を補完したり、人間の空間的能力を代替する人工知能が生み出され、地図の制作も利用もコンピュータが肩代わりする日が来るのだろうか。
第3部では、昨今の地図をめぐる技術の進歩と、「地図を読む能力」にまつわる複雑なメカニズムを
内容説明
岩絵からグーグルマップまで、変化し続ける地図は、「ここはどこ?」の問いにどう答えていくのか。
目次
いまどこ・いまここ・ここはどこ
第1部 地図の今昔(地図の起源を訪ねて;地図の万華鏡;地図の読み書き)
第2部 地図を通して知る世界(「地図が読めない女」の真相;頭の中にも地図がある;空間的思考と地図)
第3部 地理空間情報と人間(デジタル化が変えた地図作り;それでも世界の中心は私;デジタル地図の未来予想図)
進化する地図と人間の未来
著者等紹介
若林芳樹[ワカバヤシヨシキ]
1959年佐賀県生まれ。広島大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学(博士“理学”)。現在、首都大学東京大学院都市環境科学研究科教授。専攻は、行動地理学、都市地理学、地理情報科学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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