出版社内容情報
<内容紹介>
女性の少年愛嗜好とは、一般に「女の人のホモ好き」として、その心理と関心は様々な文化・風俗現象を引き起こしている。本書は作家森茉莉の創作活動、少女マンガの諸作品、ヤオイ現象とよばれた同人誌等を取りあげ、その嗜好の本質を当事者である女性が「母」から心理的に分離し自立するためのスプリングボードと捉える。現代社会に通底するこの心理・文化現象を、女性の視点から体感的に読み解いた意欲書。
<目次>
はじめに
キワモノ文化を超えて/私の経験から/多様性と差異と/″母″から分離し、自立するスプリングボードとして/精神分析という方法/隠喩として捉える
第1章 沿革、および用語と定義
一.表現の歴史
森茉莉から始まった/少女マンガの世界で/『JUNE』と『ALLAN』-エンターテインメント時代の幕開け/同人誌文化の隆盛
二.表現のスタイルと用語
やおい現象とは/二次創作-作品の元になった原作のある作品群/「今、これが一番新しい」という錯覚/無意識を映し出すスクリーン/メディアで語られた「やおい」/ヤオイの中に″やおい″がある/新たな呼称「ボーイズ・ラブ」とその読者
三.風俗現象としての側面
「おこげ」の歴史/「モーリス現象」だけじゃなく/より古い行動様式として書籍探索/サイレント・マジョリティというあり方
第2章 多様性を解きほぐす
一.無意識という難物
ある教室の光景から/″自我の肖像″として/多様な感性、多様な価値観/無意識と向き合う/検閲・文脈の移行・攻撃/投影という防衛機制
二.ファンタジーというあり方
ファンタジー-無意識と自我意識の緩衝地帯として/湧き出ずるファンタジー-森茉莉のケースから/自我を圧倒するファンタジーからの「必死の逃亡」/森茉莉の特殊な事情/転回点の作品、「或殺人」/二十四年組の作家達と比較して/退行の二つの型/保護されるべきものとしてのファンタジー
三.様々なる位相
「少年愛」という言葉の位相/重なるモチーフ群-対なる二者/背反する″シンポリズム″と″意識″/外国の作家達の場合/創造性とジェンダー/″転移″について-恋愛の様相
第3章 普遍から考察する
一.深層心理学という方法
″母″からの自立のスプリングボードとして-二つの精神分析学から/神話と儀礼/近縁するファンタジー-母子相姦ファンタジー/自我によって加工される欲望
二.″母″、その始原の光景
心理学のテキストとしてのマンガ-二十四年組の特徴/″母″をテーマとした作家、山岸涼子/「妖精王」-″父″以前、″母″との戦い/誘惑する水の女達/「悩む」存在へ--自我の歩み/クィーン・マブ ー 男根を持った母
三.双生児イメージを読み解く
先行する論者、エーリッヒ・ノイマン/ノイマンの西欧的発想の限界/父権的意識への移行という見方/ヤオイに描かれた暴力-″母″から分離する戦い/男女の双生児の存在から/神々から人間ヘ-幼児的全能感の終焉
第4章 成熟と挫折
一.少女の小宇宙-井亀あおいの心の世界から
井亀あおい、時を超えた著作/遺された夢とファンタジー/男性同性愛者の心理から/ユング派の心の構造/出エジプト記の意味
二.思春期の闘い
母親との葛藤-井亀あおいの場合/自分自身に向かう暴力/″母″を内面化するということ/セクシュアリティと自己確立
三.″父″の変貌-愛の飢餓と暴力
″恐ろしい父″の出現とその正体/″母″からの分離の失敗-森茉莉の場合/″母″を生きる-森茉莉に見る同一化の例/″やおい″とは?-愛の飢餓による挫折/被虐待児の心理との類縁性
第5章 時代とその課題
一.″父″の娘の限界
成熟の後に……/二十四年組で描かれた母親達Ⅰ-初期作品/二十四年組で描かれた母親達Ⅱ-″父″の娘としての母/近代と女性の疎外-夫である男性の視点から
二.″母″なるものを巡る錯誤
日本の母なるもの/″母″を巡る創造性と病理性/「教育ママ」の実際-森茉莉の例から/行動原理から見れば‥・-母性原理と父性原理/近代女性の不幸-森しげ子を例として/″父”=父性の欠如とは/文化としての「近代」と自我の強度/ユルスナールの場合/生育歴から還元的に見ることの誤り
三.日本の作家達の願い
近代の重みから-排除というテーマ/吸血鬼というメタファー/「マージナル」-母と女性の復活/愛の挫折と権力への妄執/ヤオイ批評へ…-SF作家、大原まり子の作品/描かれた″母″による抑圧-「ハイブリッド・チャイルド」/虐待の連鎖へ
終 章 表現と批評の現在
ヤオイの「お約束事」という限界/最初期の批評言語-金井美恵子のエッセイから/分断の構図Ⅰ-作家と読者/森茉莉を評価するということ/特権的存在として/分断の構図Ⅱ-男性識者の言説を中心に/理解と同情という名の差別/ヤオイという様式-その誕生/二十四年組少女マンガとの差別化を目指して/同人誌世代の論者の主張/当事者だけの問題ではなく……/ヤオイという様式-その特徴/メディアの問題/モノ化の思想をどう乗り越えるか/今後に向けて
おわりに
ライフワーク、というほどのこともなく
内容説明
「やおい」「おこげ」「モーリス現象」「ボーイズ・ラブ」「昭和24年組の少女マンガ」「コミケ」「二次創作」「スラッシュ小説」「双子」「両性具有」「異性装」「二重人格」「吸血鬼」「神話」「ファンタジー」等々。近現代日本の社会・文化・精神風土の枠組の中で、女性達はいかに抑圧され、いかに闘ってきたのか。
目次
第1章 沿革、および用語と定義
第2章 多様性を解きほぐす
第3章 普遍から考察する
第4章 成熟と挫折
第5章 時代とその課題
終章 表現と批評の現在
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