内容説明
20世紀初頭のウィーンで活躍し、年長の友人クリムトと共に、つねに現代絵画の旗手として位置づけられるエゴン・シーレ。その先進性・前衛性は、クリムトをはるかに凌駕している。わずか28歳で死去した天才芸術家の全貌を紹介する。
目次
第1章 美しく青きドナウ川のほとりで
第2章 ぼく、ぼく、ぼく
第3章 楽園から牢獄へ
第4章 復活
第5章 名声の獲得と若すぎる死
資料篇―傷を負ったナルシス
著者等紹介
ガイユマン,ジャン=ルイ[ガイユマン,ジャンルイ][Gaillemin,Jean‐Louis]
美術史家。パリ第4大学(ソルボンヌ)助教授。複数の美術雑誌の創刊者で、多数の国際雑誌にも寄稿している。著書も多い
千足伸行[センゾクノブユキ]
1940年生まれ。東京大学文学部卒。ミュンヘン大学にてドイツ・ルネサンス美術を学ぶ。TBS、国立西洋美術館勤務を経て、成城大学文芸学部教授
遠藤ゆかり[エンドウユカリ]
1971年生まれ。上智大学文学部フランス文学科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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harass
68
図書館本。ゴツゴツとした死体のような肉体ばかりを描く画家の絵はコミック的で好みであるが彼の生涯については初めて読む。28歳の短い人生と作品を紹介する本。個人的に人物画の印象しかなかったが、風景画も多数書いていたそうで、特に刑務所の物の絵などはおもしろく感じた。世紀末のウィーンは個人的に興味のある画家や作家などが多い。同じシリーズのブレッソンでも思ったがもっと大きなサイズで見たい。2017/09/02
Mirror
18
オフコースの松尾さんソロアルバムの1曲に出ていたエゴン・シーレ 現在東京でシーレ展が開催されていて見に行きたい。 夭折の画家ではあるが、エロスの前にタナトス、エロスの後にもタナトスという捉え方を初めて知った。妊娠中の妻をスペイン風邪で亡くし、その3日後にあとを追うシーレ。うずくまる男女はどんな気持ちで描いたのだろう?2023/03/23
こぽぞう☆
18
図書館本。高校生の時になんの予備知識もなくエゴン・シーレ展に行った。その時の衝撃といったら!その時、1番ショックを受けたのは、荒野に一本の枯れた細い木が立っていたものだったが、この本には載っていなかった。この本は、多数の図版も載せながら、基本的には伝記。2017/05/22
またの名
12
少女誘拐容疑で逮捕されたのも普段から幼い年頃の少女たちをモデルに卑猥な絵を描いたり見せたりして、田舎町では疑いの目を向けられていたから。性を大々的に扱ったクリムトの作品が「エロスの前にエロス、エロスの後にエロス」と言える解放感に満ちているのに対して、「エロスの前にタナトス、エロスの後にタナトス」と著者が特徴づける脆くはかなく痛々しくとげとげしく後ろめたい性のありさまを画布に曝したシーレ。クリムトが快楽主義なら、シーレは言うなれば苦痛主義。そんな夭逝の画家の短い生涯と作品群がコンパクトに見渡せる手頃な一冊。2017/05/09
ぞしま
11
アデルブルーは熱い色という映画で、エマはシーレよりクリムトという。自分にはわからず、そこが気になり手軽な本書を手に取る。痛々しい歪んだ人間の像だけでシーレを終わらすことはもったいない。風景画もある。なにより、あの歪んだように見える作品にもあわいがあることが分かった。クリムトとの微妙な関係も少したけ分かった、かもしれない。2014/10/06