出版社内容情報
【解説】
ユダヤ人という出自、ロシア革命への参加と挫折、パリでの成功、最愛の妻、2度の亡命・・・。本書は、波瀾に富んだシャガールの生涯を語りながら、幻想的で謎めいた作品群の裏に隠された個人的、社会的な背景を明らかにしていく最良の入門書である。
キュビズムの影響を受けた初期作品、『聖書』シリーズ,晩年に取り組んだステンドグラスなど、日本でも人気の高い作品群をカラーで満載。
監修は国立西洋美術館館長の高階秀爾。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うなぎ
12
ブックオフの戦利品。ぎっちり解説、沢山の絵がビッチリのありがたいシリーズ。シャガールの見たことない綺麗な絵だらけで眺めるだけで幸せ。ロマンティックな小話のついてる『誕生日』って絵のシャガールの奥さんベラ視点の詩が載ってて泣けた。シャガール本人がオペラ座のステンドグラスの制作をしてる写真も見れて、お得な本だった。シャガール本の中で絵のチョイスが一番好みかも。2019/08/22
D.Okada
8
シャガールの芸術の原点はやはり故郷にあったようだ。ロシア的ユダヤ的な「私と村」、フランス的な「農夫のくらし」にはそれがよく表れている。「色彩の詩人」という副題であるが、シャガールは「愛の芸術家」とも言えよう。2011/02/11
M
3
シャガールをイディッシュ語やハシティズムなどユダヤ教のアイデンティティの側面からだけではなく、色彩を中心にして、様々な文化圏を行き来することによって、その独自の世界観、無垢な詩的言語へと昇華するに至った過程が丁寧に記されている。ティツィアーノの絵画が形態よりも色彩を優先させることによって見る人の視覚だけでなく、触覚を刺激するように、シャガールの極彩色の輪郭線に縁どられた魅惑的な色彩は見る人の想像力が刺激され、白昼夢や内省的な思索から得た幻想的なイメージ、既知の体験が立体的に浮かび上がってくるようである。2020/03/26
PG
3
オペラ座の天井画『夢の花束』の話をした際母より拝借したマルク•シャガールの伝記。▶︎彼は20世紀に仏で活躍したユダヤ系ロシア人。本書副題に”色彩の詩人”とある様に、詩的かつ鮮やかな作風。妻ベラへの愛を表現したことから”愛の画家”と呼ばれるも、外交的ではなかった。(シュールレアリストと言われるのも嫌った)▶︎大戦でナチスによる作品破壊や亡命を経験。パリで評価されたが苦労も多かった。98歳の長い生涯を南仏で終える迄、飽くなき探究心を持ち続けた。▶︎彼のセンスは正に常人離れした”芸術家”のものであると感じる。2018/11/04
→0!P!
3
一般に画集というと、先に画家の説明がついていて後ろに絵がまとまっているイメージだが、この本はシャガールの生涯を追いながら、そのときに描かれた絵を逐次配置していく方法をとっており、それぞれの絵が抱擁している背景を知るのには、好ましいといえる。ただ、載せられた絵の色合いが明らかに他の画集と異なっており、恐らく実物とも大きく乖離しているのではないかと思われる。色彩にこだわるなら他の画集と見比べるとよいかもしれない。2012/04/10