出版社内容情報
昭和10年の天皇機関説事件を梃子に、文部省が火中の栗を拾うようにして本格的に乗り出した国体明徴政策。文部官僚伊東延吉を軸に進められたこの政策は、様々な問題をはらみながらも、昭和12年の『国体の本義』発行よって世間の耳目を集めることになる。従来はイデオロギー批判が主であった主題を、近代的な官僚制の一政策として捉え直し、思想の政策化過程を克明に明らかにすることで、日本的官僚制の宿痾をえぐりだす研究書。
内容説明
日本的官僚制の宿痾をえぐり出す研究。昭和10年の天皇機関説事件を梃子に、文部省が本腰を入れた国体明徴政策は、2年後の『国体の本義』発行によって世間の耳目を集める。官僚主導による思想の政策化過程を克明に再検証する、今までにない国体研究。
目次
序章 主題と研究視角
第一章 文部省の国体明徴政策の歴史的位置
第二章 『国体の本義』と文部省の政策志向性
第三章 教学刷新評議会の議題設定―国体明徴のための教学刷新
第四章 教学刷新評議会の会議運営―議事進行と答申決定
第五章 国体明徴政策への疑問点
第六章 文部省と国体明徴政策に対する外部評価
著者等紹介
植村和秀[ウエムラカズヒデ]
1966(昭和41)年、京都市生まれ。京都大学法学部卒業。京都大学法学部助手などを経て、現在、京都産業大学法学部教授。専攻、日本政治思想史、比較ナショナリズム論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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半木 糺
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戦前の国体明徴政策とその結果生まれた『国体の本義』の編纂過程を文部省官僚の立場を軸にして思想史的に叙述した著作。著者は「思想家がいかにして現実政策に関わるべきか」を主な問題意識としてきたように見えるが、まさにそのような観点から書かれた稀有な書籍である。悪名高い国体明徴運動が、その高邁な理想とは裏腹に予算と納期という官僚体制の宿痾に飲み込まれていく様は、日本だけでなく、膨大なテクノクラートと機構を抱え込まざるを得ない近代国家の宿命として読み取ることが出来る。その意味で本書は普遍性を持った思想史書である。2025/07/06