出版社内容情報
現在においても、公認文化から排斥され、深層に抑圧された無意識的な概念の表出する舞台であるオカルティズム。
それは近代ヨーロッパにおいて社会ダーヴィニズムと接合し、とりわけナチ・ドイツにおいて、フェルキッシュな人種論として先鋭化、ついには純粋アーリア=ゲルマン人種のホムンクルスを造らんとする計画が「生命の泉」で実行に移されようとするまでに至った。
ヨーロッパの底流に流れるそのオカルティズムの全体と本質を初めて明らかにした幻の名著がついに増補再刊。
叢書パルマコン第二弾!
※初版は、1990年に書肆風の薔薇(現、水声社)から発行。
内容説明
フェルキッシュな人種論は、完全に敗北したのか?非・正統的世界認識の実相に迫る名著が、ついに再刊!
目次
第1章 ウィーン=バビロン
第2章 鉤十字の城
第3章 根源人種の彼方に
第4章 予言者たち
第5章 ナチ出現前夜
第6章 「二十世紀の神話」
第7章 「祖先の遺産」
第8章 ホムンクルスの流産
附録
著者等紹介
横山茂雄[ヨコヤマシゲオ]
1954年大阪府生まれ。英文学者、作家。京都大学文学部卒、博士(文学)。奈良女子大学名誉教授。筆名に稲生平太郎、法水金太郎など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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syaori
62
人種には優劣があり、劣等種は抹殺するというナチの人種論のオカルト面の源流を辿った本。ナチ政権下の「異常な事態」は抑圧されてきた欲望と恐怖の噴出なのだと作者は言う。それは独墺、特に多民族国家オーストリア=ハンガリー帝国でのドイツ民族の優位に対する不安で、自民族の優越性を「証明」するため伝説や霊感に進化論等の科学を絡めた暗い妄想の展開が語られます。それは「己れの優越性、他者の劣等性の根拠を渇望する」心が育むもので、本書が剔抉する異形の像は確かに「私たちの無意識の欲望」の一端を拡大した姿なのだろうと感じました。2023/08/04
さすらいの雑魚
9
いまだ類書は未見の増補再刊納得な永く読み継がれるべき書物。不潔で不快だが魅惑的で心惹かれずにいられない秘教的人種主義の薄暗い系譜とナチズム生成へと至る裏面史を活写。稗史が正史を侵食し悪夢が現実を食い潰しゆく様がボクの歪んだ嗜好性癖を刺激する(^_^;) トゥーレ協会やアーネンエルベについて詳述する箇所は必見と思う。2021/01/10
塩崎ツトム
7
アトランティスとかムーとかを日本人は結構無邪気にファンタジーのネタに使ってきたし、ディズニーだってそうだけど、そこにはこんなどす黒い邪悪なオカルト人種論があったんやで。2021/01/09
らむだ
5
オカルティズムな思想・人種主義的な思想・フェルキッシュな思想たちが、互いに混ざり反発し合いながらどのような思想を育み、どのような時代の流れを生み出したのかを豊富な資料と共に詳らかにした名著。やがてドイツ第三帝国へと接続していく西洋のオカルティズム・人種主義の流れを追いながら、丁寧に歴史を辿る。2022/08/21
モスラ
3
初版をよんでからもうずいぶんたつ。再読して気づくことの多さよ。ナチにつながるオカルトが西洋諸々の抑圧の噴出なのだということがよく理解できた。オカルトがなにかということも。それにしても吸血鬼をめぐる言説が高等人種や血の純潔性を説くそれらとの近似が指摘され、あらためてハッとする。さまざまなメディアに表象される、いわゆる「吸血鬼」の貴族的なエリート志向が疎ましく感じることもあり、納得することも多かった。血には生命や魂がやどっているとはモンタギュー・サマーズも強く謂っているという。2021/10/12