出版社内容情報
子どもを対象とする心理療法では、並行して親面接(保護者面接)を行うことが一般的である。本人自身に集中する個人面接とは違い、子ども、親、その関係性等を同時に考えていかなくてはならない分、親面接には様々な難しさがある。本書では、セラピストとして多くの親面接に携わると共に、親面接のスーパービジョンも行ってきた著者が、面接やスーパービジョンの場でよく出会う疑問や困難さを手がかりとして、親面接のあり方、本質をわかりやすく解説する。さらに、実践の参考になる3つの事例を詳しく紹介する。
目次
はじめに
第1章 面接の軸
第1節 誰のための面接か?
Q(セ)「親面接では何を聞いたらよいのですか? 子どものことだけを聞くのですか? 親個人のことを聞く(あるいは聞くのはいけない)のでしょうか?」
第2節 誰と会うのか?
第3節 親面接と母親元型
Q(セ)「親がちっとも変わってくれません。これでは子どもの治療が進みません。」「子どもの問題は親のせいでは?」
第4節 全体的存在としての母親
第2章 面接の進め方
第1節 インテーク
1 主訴の重要性
Q(セ)「個人面接と違い主訴がない親面接は、どうインテークしたらよいのですか?」
2 何を聞き取るか?
3 見立て
(1) 子どもの見立て
(2) 親の見立て
4 親子並行面接への導入
(1) プレイセラピーへの導入
Q(ク)「プレイセラピーってただ遊ぶだけで治るんですか?」
Q(ク)「どのくらいで治るんですか?」
(2) 親面接への導入
Q(ク)「私(親)も面接を受けなくてはならないのですか?」
第2節 初 期
1 セラピストと子育ての経験
Q(セ)「子育ての経験がありません。そんな自分に親面接ができるのでしょうか?」
2 まずクライエントの語りを聞く
3 初期に起こりがちなこと
Q(セ)「『アドバイスが欲しい』と言われました。」
Q(セ)「『プレイルームでは何をしているのですか?』と聞かれたらどうしたらよいでしょうか?」
第3節 展開期
1 子どものセラピーの展開にしたがい起こってくること
Q(ク)「子どもの状態がむしろ悪くなったように思えるのですが、大丈夫ですか?」
Q(セ)「子どもが『プレイルームで作ったものを母親に見せたい』と言っていると子ども担当のセラピストから言われたのですが……。」
2 親の語り
3 心理教育について
Q(セ)「親への心理教育はしないのですか?」
(1) 心理教育とは
(2) セラピストが迷うということ
Q(セ)「子どものことを説明しても、聞いてくれない、理解してくれない親に対してはどうしたらよいのですか?」
第4節 セラピスト相互の連携
1 親担当セラピストと子ども担当セラピストとの関係
Q(セ)「最近子ども(親)担当のセラピストとうまく関係が取れません。」
2 クライエントとの距離の取り方
3 共有すべきこと
Q(セ)「親(子ども)担当セラピストにプレイセラピー(親面接)の内容をどこまで話したらよいのでしょうか?」
4 チームとしての親子並行面接
Q(セ)「もっと親(子ども)担当セラピストがしっかりしてくれれば……。」
5 一人で親子両方を担当する場合
Q(セ)「セラピストが私一人なので、親子並行面接はできないのですが……。」
第5節 終結のあり方
Q(セ)「親子並行面接はどのような形で終わったらよいでしょうか?」
1 子どもの症状や問題がなくなる、あるいは軽くなる
Q(セ)「子どもの症状がなくなり終結の申し出がありましたが、セラピストとしては本質的なことが解決されていない気がします。」
2 子どもが変化し始めた時、あるいは変化の途上での終結希望
Q(セ)「子どものセラピーが順調に進んでいると思っていたら、突然親から終結を切り出されました。」
3 子どもにあまり変化・改善が見られない場合
Q(セ)「重度の発達障害児と長年かかわってきました。大きな改善は見られないまま終結となりました。何をしてきたのだろうと考えたりします。」
第3章 親の個性化と子どものセラピー
第1節 個性化について
第2節 家族療法との関連
第3節 子どものセラピーとの関連
第4節 個性化と親面接
第4章 親面接の事例
事例1・事例2について
事例1 ずっと「私が悪い」「私の子育てが悪いんです」と繰り返すAさん
1 事例の概要
2 面接の経過
第1期 「私が悪い」という強力な呪縛
第2期 Aさんを先導するBちゃんの変化
第3期 “私”への模索を通して、他者との関係性に開かれていく
第4期 自分の人生を切り開く
事例1へのコメント
事例2 不安とそこからくる怒りに翻弄されるCさん
1 事例の概要
2 面接の経過
第1期 「私が悪い」というストーリーを生きる
第2期 新しい気づき
第3期 受け入れる大変さをセラピストもまた思い知る
第4期 改めて出会う
事例2へのコメント
事例3 子どもの発達相談を求めて来談したEさん
1 事例の概要
2 面接の経過
第1期 母子を共に抱える
第2期 母子並行面接のはじまり
第3期 救い手のお地蔵さまと共に
第4期 家族や実家との関係の結び直し
第5期 居場所の模索
第6期 自立に向けて
事例3へのコメント
文 献
*Q(セ)はセラピストからの質問、Q(ク)はクライエントからの質問
著者略歴
著・文・その他:山口 素子
山口 素子(やまぐち・もとこ)
京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)、ユング派分析家。日本ユング心理学会認定心理士。臨床心理士。公認心理師。現在、山口分析プラクシスとして個人開業。日本ユング研究所トレイニングアナリスト、日本ユング心理学会理事、日本ユング派分析家協会副会長。主な著訳書に、『山姥、山を降りる――現代に棲まう昔話』(単著、新曜社、2009年)『基礎から学ぶ心理学・臨床心理学』(共編著、北大路書房、2009年)『心理療法と物語』(共著、岩波書店、2001年)『青年期女子の女性性に関する研究』(単著、風間書房、1995年)『女性性の再発見――肥満とやせ症を通して』(共訳、創元社、1987年)などがある。
内容説明
子どもの心理療法と並行して行う親面接(保護者面接)では、子ども、親、その関係性等を同時に考えなくてはならないため、様々な難しさがある。本書では、セラピストとして多くの親面接に携わると共に、親面接のスーパービジョンも行ってきた著者が、面接やスーパービジョンの場でよく出会う疑問や困難さを手がかりとして、親面接のあり方、本質についてわかりやすく解説する。さらに、実践の参考になる3つの事例を詳しく紹介する。
目次
第1章 面接の軸(誰のための面接か?;誰と会うのか?;親面接と母親元型)
第2章 面接の進め方(インテーク;初期;展開期;セラピスト相互の連携;終結のあり方)
第3章 親の個性化と子どものセラピー(個性化について;家族療法との関連;子どものセラピーとの関連;個性化と親面接)
第4章 親面接の事例(ずっと「私が悪い」「私の子育てが悪いんです」と繰り返すAさん;不安とそこからくる怒りに翻弄されるCさん;子どもの発達相談を求めて来談したEさん)
著者等紹介
山口素子[ヤマグチモトコ]
京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)、ユング派分析家。日本ユング心理学会認定心理療法士。臨床心理士。公認心理師。現在、山口分析プラクシス主宰。日本ユング研究所トレイニングアナリスト、日本ユング心理学会理事、日本ユング派分析家協会副会長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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