出版社内容情報
本書は、自閉スペクトラム症(ASD)を持つ成人とその傾向を持つグレーゾーンの成人の「対人不安」を理解することを目指す心理臨床学的研究の成果である。先行研究の詳細なレビューを踏まえて、質問紙調査によってASD傾向者の対人不安の全体的特徴を見た上で、面接調査によってASD者・傾向者一人ひとりの語りから対人不安をめぐる体験のエッセンスを描出し、考察する。また、その語りの内容とバウムテストの結果との関連についても検討する。こうした当事者の主観的体験に注目した研究を通して、ASD者・傾向者の対人不安の非定型性が明らかになり、そこからは独特の「自己意識」のあり方が見えてきた。
目次
序章 自閉スペクトラムの心理臨床学へ向けて
第1章 自閉スペクトラムの対人不安の非定型性―文献の展望
第2章 従来の対人不安との比較
第3章 グレーゾーン大学生の対人不安1―質問紙調査
第4章 グレーゾーン大学生の対人不安2―語りの分析
第5章 成人自閉スペクトラム症者の対人不安―語りの分析
第6章 事例に見る自閉スペクトラムの対人不安―語りとバウムテスト
終章 自閉スペクトラムの対人不安の心理臨床学
著者等紹介
木村大樹[キムラダイキ]
大阪府枚方市生まれ。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得満期退学。博士(教育学)。現在、聖泉大学人間学部講師。臨床心理士。公認心理師。専門は臨床心理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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・AQを説明変数とする重回帰分析の結果が掲載されており有難い。この分析結果は大学生調査のみであるが、社会人にも対象を広げるとどうなるか興味深い。 ・後半の章でバウムによる検討がなされているが、社会人当事者Kさん(41歳会社員,AQ=36,上司からのパワハラによる視線恐怖症)のバウムがパワフルで嬉しい。 ・昔ながらのsocial phobiaとの比較考察がなされている点も興味深い。お得意の箱庭療法による治療効果についても踏み込んだ検討があると一層面白そうだが、そのあたりは今後の課題と拝察。